女性起業家と社会

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2007年08月02日

  • 中野 充弘

まず質問です。

あなたは「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成ですか。

6月に発表された『男女共同参画白書(平成19年版)』の中には、これからの社会の変化を示唆するデータがいくつもあり、とても興味深い。

第一に女性国会議員の割合。日本は9.4%と調査対象189ヵ国中131位である。スウェーデン47.3%、ノルウェー37.9%など北欧諸国が高く、ドイツ31.6%、英国19.7%、米国16.3%、フランス12.2%などとなっている。この10年ほどの間に女性議員や女性大臣が相当増えたとの印象があったが、実際には国際的な水準と比べると、まだ大きく遅れている。

次に女性管理職の割合はどうか。欧米がおおむね3割程度であるのに対し、日本は10%とこれも相当低い。日本企業において女性部長は少しずつ増えてきたが、女性取締役はまだ少ない。

白書では育児期の役割分担にも言及されており、男性の分担度は欧米が3~4割に対し、日本は13%。さらに、家族全員で夕食を取った回数や、就学前の幼児を持つ父親の帰宅時間などの項目においても、国際比較で最も劣っていると指摘されている。

さて冒頭の質問に対し、日本の男性は賛成47%、反対46%、女性は賛成37%、反対57%という結果だった。しかし米国(男性)では反対77%、英国(男性)は同89%、ドイツ(男性)同74%、スウェーデン(男性)同88%と圧倒的に反対が多い。約30年前の日本(男性)は賛成76%、反対17%であったことを考えると、わが国も時間軸で見れば急速に変化しているものの、まだ国際比較では遅れている。かつての常識が非常識に変わろうとしている。

日本で女性の社会参画がまだ遅れている原因の一つには、育児・家事あるいは介護などを女性に依存する風潮が残っているからではないか。「男女共同参画」とは、働く女性を託児所などでサポートするという部分的な視点ではなく、むしろ男性の働き方自体を見直さなくてはいけないという大きな課題に気が付く。それが白書の言う「ワーク・ライフ・バランス」なのである。

日本経済の問題として、好調な輸出と比べて、内需の低迷を指摘するエコノミストは多い。従来の延長線からの発想では、これまでみてきたような変革に対するアイデアが出てこないのかもしれない。内需の重要な担い手であり、これまでの社会の問題点を身近で感じてきた女性にこそ起業を期待するゆえんである。社会で期待される新しいサービスを提供し、労働(働き方)や家庭のあり方に一石を投じ、「あなたにとって豊かな人生とは」といった根源的な問い掛けにも、新たな回答が用意されるかもしれない。

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