会計基準のコンバージェンス

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2007年07月31日

  • 吉川 満
会計の基準コンバージェンスが、いよいよ最終段階を迎えている。2008年、年央までにコンバージェンスを行なう予定になっている。しかし、会計基準のコンバージェンスはかつて2005年、2007年の二度にわたって、国際会計基準審議会(IASB)が実現のゴールを設定した事がある。しかし結論から言うと、これら2回はコンバージェンスの作業が間に合わず、予定が先送りされて、現在に至っている。だから今回も絶対に、2009年にはコンバージェンスが実現するとは断言できない。しかし、今年7月3日、米国のSECは【外国の民間発行者からの、国際財務報告基準に従って作成された財務諸表を、米国で一般に用いられている会計基準への調整作業なしに受け入れること】と言うリリースを発出した。SECはこの中で、国際会計基準審議会の公表した国際財務報告基準に従って作成された財務諸表は、無修正で受け入れることを提案している。これはいよいよSECが会計基準のコンバージェンスに向けて、最終段階の作業に入ったことを示している。

SECの質問に答えて米国民が、IFRS財務諸表を無修正で受け入れることを選んだら、次はそれに答えて、EUが米国基準を無修正で受け入れるかどうかの決定をする番である。そこまでの作業が進めば、国際財務報告基準と米国財務会計基準とは、国境なしに相互に通用するようになる。こうなる事が現在考えられているコンバージェンスの姿である。

それでは日本はどういった形で会計基準のコンバージェンスに参加するのだろうか。まず会計基準のコンバージェンスとは、二国もしくは、二つの国と地域の間で使用する会計基準が全く同じになることを意味するわけではない。相互に受け入れられる位に会計基準の内容が接近すれば、コンバージェンスが成立したという事になるのである。

日本は現在、国際財務会計基準委員会との間で、コンバージェンスの作業を進めている。具体的には欧州委員会が、日本の会計基準は質の点で同等といえるかどうかの検討を行なっている。この検討は2008年央までに、終了させる事になっている。もし日本の会計基準が質の点で同等と認められるならば、2009年(度)からはEUにおいて、日本の会計基準が使用できることになる。この場合には、日本でも国際財務報告基準で作成した財務諸表を受け入れる事になると思われる。日本と欧州の会計基準のコンバージェンスはこうした形で実現するものと想定されている。

それでは、日本と米国の関係はどうなるのだろうか。まず米国は、当面は日本の財務諸表を受け入れることはないものと思われる。日本は現在でも、米国基準で作成した財務諸表を使っているのだし、日本企業から日本の財務諸表を認めてくれと言う要望も出ていない。だから、日本との関係は現行どおりで問題ないはずだ、と米国は考えているのである。(そもそも日本が、日本の財務諸表を認めてくれと言う要望を出したところで、その場合には少なくとも、欧州の同等性評価と同じような厳しい審査が日本の会計基準に対して行なわれることは確実と思われる。)だから、日本の企業が米国でファイナンスを行なうためには、現行のように米国会計基準に従って財務諸表を作成し、提出するか、もしくは、それが認められれば国際財務報告基準によって作成した財務報告を作成し、提出する事が必要になる。

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