ソフトウェア業界のグローバル競争

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2007年07月30日

  • 小原 誠
開発コストの削減や国内のIT要員不足のため、中国やインドへのオフショア開発が伸長している。しかし日本のソフトウェア業界をグローバルに俯瞰すると、オフショア開発によるソフトウェアの輸入は、全体のごく一部でしかない。JISAの調査によれば、最大輸入相手国は約1兆円の米国であり、中国からの輸入は、その約20分の1である。一方で、日本からのソフトウェアの輸出は全体でも数百億円に過ぎない。日本のソフトウェア業界の輸出入は、ゲーム関連ソフトを例外として、大幅な入超である。

輸出入統計から考察するに、日本のソフトウェア業界のグローバル競争力は、高いとは言えない。考えてみれば日本では、OSやデータベースなど基本ソフトの殆どを、マイクロソフトに代表される米国企業に依存している。検索エンジンも、一時期国産ベンダが健闘したものの結局はGoogleに収斂してしまった。ERPのような業務パッケージソフトでも欧米製のシェアが高い。日本発のソフトウェアがグローバルスタンダードとなった例は聞こえてこない。

近年、日本のソフトウェア業界は、特定顧客を対象にしたカスタムメイドソフトの開発・運用が収益源になっている。このビジネスモデルは、日本語や業務知識が参入障壁になるために、急成長は望めないが安定的とされている。ほどほどに大きい日本市場に安住して囲い込みを続けているうちに世界市場に取り残される現象を、「パラダイス鎖国」と呼ぶそうであるが、日本のソフトウェア業界も、残念ながらこの現象が適合しているように感じる。

グローバル競争市場では、規模の経済(収穫逓増)が作用しやすい。そう考えると、ソフトウェア業界のグローバル競争においても、ほどほどではなく、圧倒的に大きい国内市場を持つ中国の方が、日本よりも分があるように思える。因みに中国の検索エンジンのトップシェアは、Googleではない。中国国産の「百度」である。

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