防衛策の行方
2007年07月26日
| 7月に入り、ブルドックソースのスティール・パートナーズに対する買収防衛策(以下、防衛策)発動、テーオーシーに対するダヴィンチ・アドバイザーズの敵対的買収不成立など、具体的な敵対的買収の行方が注目を集めた。ブルドック、テーオーシーともに、結果として、現経営陣が株主の賛同を得た形となった。6月末にピークを迎えた株主総会でも、(1)増配(2)取締役などの選任(3)防衛策関連について株主提案・委任状合戦がみられたが、一部例外を除き会社提案はほぼ可決された。投資家の間では、株主還元強化に対する企業側の反対姿勢や、それが支持される構造、持合や防衛策導入について、ガバナンス低下を危惧する声もある。しかし、本来、防衛策の目的は買収や公開買付けの阻止でなく、各ステークホルダーが買収案を検討できる機会を確保することである。買収・事業再編の危機を契機に成長機会を捉え、更なる飛躍が期待できる可能性も見逃せない。 M&A(=再編圧力)の参考として買収防衛策導入率に注目 防衛策導入が増加した背景は、(1)国内外での業界再編機運の高まり(M&Aの増加)、(2)会社法の改正による三角合併解禁が指摘できる。M&Aの増加は、(1)好景気で余裕資金ができたこと(2)リストラ一巡後の成長を加速させるためが主因であろう。つまり、M&Aは好景気が持続する限り増加する可能性がある。昨今の欧米の株式相場は、M&Aに牽引される面も指摘されており、優良なM&Aの情報の重要度は増してきている。 そこで、防衛策導入率が高い業種を、M&Aに対する脅威=再編圧力が強いと考え、防衛策導入率を事業再編の参考指数として注目してみる。大和総研が5月末に行った調査では、防衛策導入を表明した企業が占める割合は、1年で7.6%から16.2%に倍増していた(対象:東証1部)。一方、米S&P500採用企業では全体の4割を超える企業が防衛策を導入している。S&P500では、鉄鋼、特殊化学を含む「素材」や「資本財・サービス」で、5割を超える企業が導入していた。日本でも鉄鋼やパルプ紙などの「素材」で導入率が高い。日本で、新規導入比率が高かったのは、王子製紙が北越製紙に敵対的買収を行ったパルプ紙のほか、海外売上高比率の高いゴムであった。新規導入社数が多かったのは、化学(16社)、電機(13社)、機械(12社)、小売(12社)、食料品(11社)、他製品(11社)であった。 防衛策の導入が企業価値を高める買収・事業再編の選別に結びつくのか、引き続き注目したい。
出所:適時開示情報などよりDIR作成 |
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