Gmailにみる「情報管理」とパラダイムシフトの予感

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2007年07月20日

  • 高野 剛

Googleが提供するWebメールサービス「Gmail」を使用したことのある人は、最初その操作感に戸惑いを覚えた事と思う。多くの人にとって、それは今までに経験したことのない操作感である。Gmailにおけるメールの管理に対する考え方がその一因となっている。

従来のメールソフトやWebメールサービスでは、ユーザが「フォルダとファイル」による階層構造を用いてメールを保存・整理する事を前提としている。一方、Gmailではメールを一箇所に保存するという原則があるため、ユーザはメールがどこに保存されているかを強く意識しない。つまりユーザはメールを整理する必要がない。後日メールを探すときは、ユーザはGmailに対してキーワードを入力し、強力な検索機能を用いてメールを探す。検索結果が複数表示されるかもしれない。その場合、ユーザは検索用キーワードを増やして検索結果を絞り込むか、検索結果数がそれほど多くなければ全て開いてみればよい。検索結果から目的のメールを見つけることは困難な作業ではない。

「フォルダとファイルによる情報管理」は、コンピュータの世界における長年の「伝統」である。OS(基本ソフト)から一般ユーザ向けソフトまで、この「伝統」に従っている。コンピュータの専門家にとっては自然で容易なこの考え方も、コンピュータを専門としない一般ユーザにとっては必ずしも容易ではない。また、コンピュータに慣れている人も、日々増えていく情報をフォルダとファイルで管理し続けていくことに限界を感じることがある。PCが普及し、一般ユーザが劇的に増えた現在、「検索による情報管理」という考え方が、多数の一般ユーザを持つWebサービスに投入されたことは画期的である。

Gmail以降、「検索による情報管理」はメール以外のWebサービスでも導入されている。また、いわゆるデスクトップ検索ソフトも複数登場している。強力な検索機能をアピールするOSベンダもある。コンピュータの世界における情報管理のパラダイムシフトを日々感じる。

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