2007年07月17日
過去10年間の世界経済を振り返ると、中国などの巨大新興国の台頭と、彼らの市場経済化が急速に進んだ。80年代末までの市場経済は西側先進国10億人に限定されていたが、ベルリンの壁が崩壊され、東西冷戦が終結するとともに90年代以降、旧東側諸国や発展途上国の20億人、30億人が市場経済へ移行。新興国は経済・政治体制の問題点を克服しながら、97~98年のアジア危機などを乗り越え、ここ10年くらいの間に経済発展が本格化してきた。また、別な観点から言えば90年代以降、ヒト・モノ・カネ・サービスのグローバル化(ボーダレス化)が急速な勢いで拡大し、ITの浸透やネットワーク基盤の整備が進む中で、世界経済は統合化された巨大市場へと変貌を遂げている。
まさに世界経済は、統合化された巨大市場へと変貌を遂げつつある。IMFによると07年の世界経済の名目GDPは購買力平価ベースで約70兆ドルに達し、07年のGDP増加額が4.6兆ドル前後になり、日本一国に相当する分増加する。成熟した国内市場をターゲットにしている内需系企業よりも、欧米先進国市場、さらに言えばダイナミックに成長を遂げる中国・アジアなどを対象に、統合化された世界市場を相手に活躍している多国籍企業の方が成長ポテンシャルが大きいわけだ。
なぜ、世界有数のグローバル企業たちが熾烈な競争を繰り広げ、再編・淘汰を推し進めるのか。統合化が進む巨大市場においては、グローバル競争に勝ち残った一握りの勝ち組(スーパースター)が膨大な富を総取りしやすい構図だからである。その競争力を左右するのが資金力、技術力、ブランド力などである。この極めて重要な歴史の変化点において、日本企業はどのように行動しているのか。将来を見据えながら先行投資を断行し、事業展開を推し進める企業群と、リストラ・撤退に追われた企業群との間には歴然とした格差が生じ、さらに拡大する可能性が高い。
約110の小業種ごとに業界内で時価総額でトップとそれ以外の株価をみると、業界トップが買われる二極化相場の様相が出てきているが、PERの格差は殆ど生じていない。トップ企業の大きな魅力は高い利益率にあり、これは価格支配力やコスト競争力の強さの一面でもある。こうした高利益率を生み出す原動力として売上高設備投資比率や売上高研究開発費比率は、業界トップが高い値を示している。全ての業界ではないが、先行投資の規模などでトップと2位以下との格差が、想定以上に開いているところも散見され、将来3年を見渡すと、収益面でさらに格差が拡大する業界も多そうだ。
日本企業がグローバル競争に勝ち残り、強味を発揮しそうな産業分野は自動車・同部品、建機・ロボット・工作機械・製造装置などの資本財、原子力発電所など重電、鉄鋼をはじめとするハイエンド素材、電子部品・部材、環境・省エネ関連、精密機器、ゲームなどが中心になるのではないかとみる。非製造業では海運、総合商社であろう。このような産業分野の勝ち組がさらなる収益拡大を目指しそうである。今後、好調組と低迷・不振組との格差拡大の他、それぞれの業界内で二極化が進み、限られた勝ち組に人気が集中する方向とみられる。
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