熱い視線集まる抗体医薬・タンパク質構造解析関連バイオベンチャー

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2007年07月13日

  • 竹内 慈実
最近、国内の製薬企業がバイオベンチャーとの提携や買収を積極化している。国内トップの武田薬品工業は、2005年1月から2007年6月末までの間に累計で約15社のバイオベンチャーと医薬品の開発に係わる提携等を行った。国内3位のアステラス製薬も、同期間内に累計で約10社のバイオベンチャーと医薬候補品等のライセンス契約を締結した。第一三共、エーザイ、塩野義製薬、小野薬品工業なども同期間に複数のバイオベンチャーとの提携・買収に踏み切った。その提携先に目を向けてみると、疾患の原因物質を攻撃する抗体を活用する抗体医薬品の探索・開発・製造に係わる技術を基盤とした創薬系のバイオベンチャーが非常に多いことに気が付く。例えば、2007年4月にエーザイが買収した米Morphotek社や、武田薬品工業が2006年から2007年に提携した米Bio Wa社、米Xoma社、米Galaxy Biotech社、加Arius Research社、アステラス製薬の提携先である米Regeneron Pharmaceuticals社(同社は第一三共および塩野義製薬とも提携している。)、独MorphoSys社、などがこれに該当する。

他には、たんぱく質の構造解析技術を持った創薬系バイオベンチャーとの提携・買収が目に付く。具体的には、武田薬品工業が2005年2月に買収した米Syrrx社や、小野薬品工業がキナーゼ(※1)に関する創薬について提携した米Locus Pharmaceuticals社、そして塩野義製薬が抗インフルエンザウイルス剤「ペラミビル」に関するライセンス契約を締結した米BioCryst Pharmaceuticals社などである。

このように、抗体医薬やタンパク質構造解析による医薬候補品の創製・開発を手掛けるバイオベンチャーには、製薬企業から熱い視線が集まっている。日本にもこの領域で事業化を目指しているバイオベンチャーは少なくない。だが、残念なことに日本のバイオベンチャーが製薬企業と共同開発などの提携に至った例は極めて少ない。上市品や開発段階後期の医薬候補品を持つ百戦錬磨の欧米バイオベンチャーと比較されるので、製薬企業との提携への道は険しかろうが、是非ともがんばってもらいたいものである。

(※1)タンパク質の特定のアミノ酸をリン酸化する酵素の総称。リン酸化により、多くのタンパク質の活性を制御しており、シグナル伝達(細胞内外で、ある種の刺激が伝えられていく機構)系において重要な役割を果たす。

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