蓮の花に想う

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2007年07月11日

  • 菅原 晴樹
6月上旬、急に思い立って唐招提寺の鑑真和上にお会いするため、奈良へ向かいました。まずは国宝八部衆立像が一同陳列されている興福寺の国宝館に行きました。あの阿修羅像の両掌がまさに手を合わせようとする瞬間は、いつ観ても感動します。

それから、西ノ京の薬師寺を訪ね、般若心経の写経を納め、玄奘三蔵院に収められている平山郁夫画伯の大唐西域壁画を鑑賞しました。

そして、今回の目的である唐招提寺へ。国宝の金堂は現在平成大修理事業であの美しい鴟尾と柱を見ることは出来ませんでした。来年秋修理落慶法要とのことです。

6月6日が命日の鑑真和上が祀られている御影堂は、毎年前後数日公開されているのです。唐の高僧だった和上が日本の仏教発展のため、何度も渡航に失敗し、最後は失明をしてその想いを果たしました。故郷の風景と日本海を描いた東山魁夷画伯の障壁画に囲まれて、不屈の精神を内に秘められた和上のお姿は、ただただ圧倒されるばかりでした。

そのあと、境内の奥まったところにある和上の墓所を訪ねました。森閑とした木立に囲まれた開山御廟で長い間手を合わせていた老夫婦が印象的でした。見渡すと先ほどまで降っていた雨に濡れた蓮の花がひっそりと咲いていました。

ふと頭を過ぎったのが「消えた年金記録問題」のこと。わが国の公的年金に対する国民の信頼を損ないかねない重大な事件(!)です。

責められるべきは、杜撰な記録管理を行ってきた社会保険庁であることは言うまでもありませんが、喫緊の課題は、社会保険庁の総力を挙げて実態を反映した正確な年金記録にすることです。

しかしながら、建前上、被保険者の申請・届出に基づく記録管理であることから、私たちが自らその記録をチェックしなければなりません。特に、何度も転職をされた方、結婚して姓が変わられた方、氏名に複数の読み方が出来る方などは要注意です。

自分自身の加入・納付記録を確認する場合は、各地の社会保険事務所の窓口に行き、照会する方法がありますが、平日のみで混雑しており、なかなか相談を受けてもらえることは難しいようです。

できることなら、社会保険庁のホームページから、「ID・パスワード」を取得し、インターネットで 「年金個人情報サービス」を利用したほうが、得策と思われます。

団塊の世代の方は、まもなく受給できる年金額を前提に、退職後のライフプランを設計されていることと思います。ところが、その基本設計に偽装が潜んでいるかもしれません。

わが身を振り返ると、不安材料があります。転職もしましたし、加入していた厚生年金基金も解散しました。数年後に迫った年金生活を迎えるにあたって、年金記録を自分自身で確認し、自分の年金は自分で守ろうと思います。

京都五山送り火の頃には、猛暑が和らぐように不安も解消されていればと思います。たぶん・・・

蓮葉の にごりにします 心もて
なにかは露を 玉とあざむく (古今和歌集 僧正遍照)

 

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