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ワーク・ライフ・バランス

2007年07月10日

最近、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を耳にするようになった。つまり、仕事を充実させつつも一辺倒ではなく、ワーク(仕事)とライフ(私生活、育児、家族・友人関係、地域社会とのかかわり、など)とのバランスをうまくとって、より充実した人生を過ごそうという考え方である。1990年代頃から欧米で浸透しはじめ、日本でも近年よく紹介されるようになってきた概念である。個人的に最近読んだ本の中から、以下でいくつか事例を引用させていただく。

「ハーバードMBA留学記」(岩瀬大輔、日経BP、2006年)というとても面白い本がある。その中に、あるギリシャ人の漁師のエピソードが笑い話として出てくる。その漁師は毎朝早く起き、雄大な海原を船で漁に行き、昼近くに戻って仲間たちとその日とれた魚を一緒に食べる。食べ切れなかった魚を市場で売り、ささやかな現金収入を得て、それで食物や生活用品を買う。午後は、子供たちと遊び、夕食も家族で食卓を囲み、子供たちが寝静まると妻とワインを飲みながら穏やかな一日を終える。

そこへ、アメリカの投資銀行家が数十ページの提案書を携えて現れる。そして、「あなたのビジネスを飛躍的に発展させるために、船を追加購入し、人を雇い、事業を拡大し、その後、効率化のためのIT投資をし、同業者を買収して規模のメリットを享受して、最終的には上場して世界規模の企業となって、大成功をさせましょう。」と理路整然とプレゼンを行う。一通り話を聞き終わって、その漁師は初めて口を開いた。「その後、私は何をすればいいのですか。」と。投資銀行家は、「巨額の富を得た後は、自由にお金を使って、おいしい物を食べ、美しい自然環境のもと、家族とすばらしい時を過ごしていただけます。」と、答える。すると、漁師は「それでは、今の生活と何も変わらないではないですか。そのために、そんなに大変な思いをしなくてはならないのですか。」とつぶやく。つまり、目的は幸せな人生を送ることであり、仕事の成功を追い求めるあまり、それを犠牲にしてしまっては、本末転倒ということであろう。

「仕事も人生も4つのボールでうまくいく」(タッド・バッチ、ダイヤモンド社、2006年)という東京スター銀行のアメリカ人頭取が書いた本は、まさしく「ワーク・ライフ・バランス」についての著書である。ポイントは2つ。(1)「自分」、「家族・友人関係」、「地域社会」、「仕事」という4つのボールをお手玉のように回し、強弱はその時々でつけるにしても、どのボールも落とさない、完全にはオミットしてしまわないこと。(2)それぞれのボールについて「ちょうどいい」ぐらいで満足し、1つのボールにあまりのめりこみ過ぎないこと。

最後に、前述のギリシャの漁師のあとに出てくる話を1つ。成功した富裕層を対象に、死の直前までメンタルなケアするカウンセラーの経験によると、人生振り返って「もっと仕事をしておけば良かった。」と言う人よりも、「もっと家族や友人との時間を大事にしておけば良かった。」とつぶやく人の方が圧倒的に多いそうだ。

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