今後、優位な展開が期待できる景気敏感市場(韓国、台湾)
2007年07月05日
台湾、韓国市場が好調に推移している。6月以降の各市場の主要株価指数(Taiex、KOSPI)の上昇率は、それぞれ11.3 %、8.1 %と日本株を含むアジアの主要市場(ただし、香港上場のH株は除く)のなかでは1、2位のパフォーマンスとなっている(7月4日終値現在)。これら2市場は、香港やシンガポールとは違い、世界景気の動向により敏感に反応する性格があり、従来から07年中盤までには株価再評価が起こることを指摘してきた。高パフォーマンスの背景には、(1)中国/インドの高成長が続くなか、米国の景気指標にも景気の緩やかな拡大を示唆する指標が増え始めたこと、(2)世界景気の先行きを示すOECDの景気先行指標(CLI、G7ベース)が2月をボトムに反転の様相を強めていること、(3)輸出伸び率がボトムアウトしたとみられ、年後半のハイテク需要の盛り上がりへの期待が高まっていること、(4)特に韓国は、内外需のバランスの取れた成長軌道に乗りつつあることでハイテクのみならず建設や鉄鋼など幅広いセクターへの物色が継続していること、などがある。(1)は、インフレ懸念が払拭できない中で、最近の長期金利の上昇を促している要因であるが、韓国、台湾(また、日本市場も)などのような景気敏感市場にとっては景気拡大を示唆するものでありむしろポジティブ要因として作用している。実際、90年以降の米国金利と韓国、台湾市場との相関関係に明確な負の相関が認められず、昨今の米国の金利上昇が必ずしもマイナスには働くものではないことがわかる。韓国、台湾両市場に共通する要因としてはCLIの動きとの強い正の相関が確認されており、CLIがボトムをつけてから1年程度は上昇基調にあるという経験則に従うと、両市場は少なくとも年内は上昇基調を辿るものと思われる。 特に韓国市場の年初からのパフォーマンスは30%近くに達しており、アジアの主要市場では最高のパフォーマンスとなっている。牽引しているセクターは機械、輸送用機器、運輸・倉庫、素材、などであり、これまで看板セクターであった電機の貢献度は低い(年初からのパフォーマンスは3%をやや上回る程度で市場平均を大きく下回る)。上述したように新興市場の需要拡大(特にインフラ関連需要)によるいわゆるオールドエコノミータイプのセクターの復権がうかがえる。実際に、韓国企業の新興市場への取り組みは非常に積極的で00年以降、長期的なウォン高傾向が続く中で、海外直接投資を急速に拡大してきた(別図参照)。最近の韓国企業の海外直接投資動向を見ると、業種では鉱業、製造業、建設、輸送、不動産が、地域別ではアジア、中東地域をはじめあらゆる地域での積極的な投資が窺える。具体的には資源のSK Corp、鉄鋼のPOSCO、建設の現代建設や大宇建設、プラントのサムスンエンジニアリングなどである。ウォン高を利用した海外市場の取り込み、サプライチェーンの構築は80年代の日本企業も同様の戦略を採用したが、韓国の場合は中国やインドの勃興、中東景気の好調というタイミングの良さもあり、企業収益への寄与度も80年代の日本を大幅に上回っていると思われる。こうした点が、オールドエコノミーセクターを中心に現在の株式市場で評価されつつあるのではないか。世界景気、特に新興国景気の拡大が継続する限り、韓国市場の優位性は揺るがないとみられる。
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