人民に監視させよ

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2007年07月02日

  • 原田 泰
社会保険庁の年金支給漏れ事件は、次々とミスが見つかり、さらには、報道によると職員の着服までもが疑われており、収まるところがないようだ。私が不思議に思うのは、40年間も途中経過を報告せず、40年たってやっとどうなっていたかが分かる制度を、これまで放っておいたことだ。確かに、35歳、58歳時にも報告されるようになったが、過去には一切の経過報告がなかった。

民主党の年金通帳、自民党の年金カードという提案がなされたのは良いことだが、遅すぎた。人々がなぜ銀行預金という制度を信じるかと言えば、通帳とATMでいつでも預金の出入りをチェックできるからだ。また、通帳があるから、銀行もミスしてはいけないという緊張感を持つことになる。年金も同じようにすればいい。

誰にでもミスはあることだから、ミスは将来の受給者本人に見つけさせるのが一番だと誰も今まで考えなかったのは不思議だ。社会保険庁が、これだけの保険料をいただいていますのでご確認下さいと毎年本人に連絡すればいい。1年くらいなら領収書を保存しているだろうし、勤め先でも確認できる。

中国のある高官から、中央政府としては環境を保全したいのだが、地方官僚が成長を重視して言うことを聞かないという話しを聞いた。私は、汚染に反対する住民の言論、請願、デモなどの自由を認めれば良いではないかと質問した。高官は、その通りだ、すでに試みていると答えた。中国共産党が、本当にそうしているのかどうかは知らないが、中国の環境保全でも、日本の年金の記入漏れ対策についても、人民に監視させる制度が優れているに決まっている。

途中経過を人民に報告しない年金制度とは、独裁政治のすることだ。独裁政治を許してきた人民も、目覚める必要があるのではないか。

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