中国政府が省エネ・環境保護に本腰
2007年06月26日
中国国務院(中央政府)は6月3日、「省エネ・汚染物質排出削減総合活動計画」(以下、総合計画)を公表した。このなかで特筆されるのは、[1]政府幹部や企業経営陣の政績(昇進・昇格の考課表である政治的成績)評価項目の中で、省エネ・汚染物質の排出削減を最重視するとしたこと、[2]部門・分野ごとに2010年までの省エネ・汚染削減の具体的な数値目標を発表し、抑制分野と奨励分野を明確に区分したことである。当コラムでは、前半部分についてコメントしたい。
まず、総合計画では、第11次5ヵ年計画(2006年~2010年)で重要目標として掲げた、(1)単位GDP当たりのエネルギー消費量を2005年比で20%削減する、(2)主要汚染物質の排出量を同10%削減する、との目標の達成が極めて難しいことを指摘。5ヵ年計画の初年である2006年の目標(それぞれ4%削減、2%削減)はいずれも未達成に終わった。この背景には、地方政府は相変わらず、地域の経済成長率など成長の「速さ」の追求に勤しみ、省エネや環境保全の優先度合いが低いままになっていることがある。
こうした状況の改善には、地方政府や企業の意識変革を行う必要がある。そこで総合計画は、省エネ・汚染物質排出削減を政府幹部や主要国有企業経営陣の政績評価の最重要項目とし、同項目を「一票否決」と位置付けるとした。一票否決とは、国連安全保障理事会常任理事国の拒否権と例えれば判りやすい。要は、省エネ・汚染物質排出削減目標が未達であれば、他の評価項目がどんなに優れていても、全体の評価は落第とされるのである。
中国では、共産党幹部の昇進のためには、政績を上げることが重要で、その評価項目として、従来は経済成長率と税収増加に重きが置かれ、このことが地方政府の高い成長志向の要因のひとつとされてきた。その後、中国共産党中央組織部は、2006年7月に「科学発展観の具現に要求される地方の党・政府幹部の総合評価審査のテスト方法」を策定し、地方幹部の「政績」評価に新たな基準を設けている。実績評価の項目では、(1)資源消耗と安全生産、(2)社会保障、(3)人口と計画出産、(4)耕地など資源保護、(5)環境保護、(6)一人当たりGDPとその伸び率、(7)都市と農民の収入とその伸び、(8)基礎教育、(9)都市部の就業、(10)科学技術投入と刷新、(11)一人当たり財政収入とその伸び率、(12)文化的な生活、の12項目を掲げ、従来と比べて、よりバランスの取れた評価方法を採用するようになったのである。しかし、12の項目は並列で表記され、優先されるべき項目を明示するには至っていなかった経緯がある。
こうしたなか、今回の総合計画が、省エネ・汚染物質排出削減を「一票否決」と位置付けたことは、中央政府が取り組みに本腰を入れたものとして高く評価される。今後は、総合計画の厳格な運用により、実効性を如何に高めるかが鍵である。中央に報告される数字だけが改善を示し、実態が伴わないなどということはあってはならないと、北京で生活し日々大気汚染を実感する筆者は切に願う。
まず、総合計画では、第11次5ヵ年計画(2006年~2010年)で重要目標として掲げた、(1)単位GDP当たりのエネルギー消費量を2005年比で20%削減する、(2)主要汚染物質の排出量を同10%削減する、との目標の達成が極めて難しいことを指摘。5ヵ年計画の初年である2006年の目標(それぞれ4%削減、2%削減)はいずれも未達成に終わった。この背景には、地方政府は相変わらず、地域の経済成長率など成長の「速さ」の追求に勤しみ、省エネや環境保全の優先度合いが低いままになっていることがある。
こうした状況の改善には、地方政府や企業の意識変革を行う必要がある。そこで総合計画は、省エネ・汚染物質排出削減を政府幹部や主要国有企業経営陣の政績評価の最重要項目とし、同項目を「一票否決」と位置付けるとした。一票否決とは、国連安全保障理事会常任理事国の拒否権と例えれば判りやすい。要は、省エネ・汚染物質排出削減目標が未達であれば、他の評価項目がどんなに優れていても、全体の評価は落第とされるのである。
中国では、共産党幹部の昇進のためには、政績を上げることが重要で、その評価項目として、従来は経済成長率と税収増加に重きが置かれ、このことが地方政府の高い成長志向の要因のひとつとされてきた。その後、中国共産党中央組織部は、2006年7月に「科学発展観の具現に要求される地方の党・政府幹部の総合評価審査のテスト方法」を策定し、地方幹部の「政績」評価に新たな基準を設けている。実績評価の項目では、(1)資源消耗と安全生産、(2)社会保障、(3)人口と計画出産、(4)耕地など資源保護、(5)環境保護、(6)一人当たりGDPとその伸び率、(7)都市と農民の収入とその伸び、(8)基礎教育、(9)都市部の就業、(10)科学技術投入と刷新、(11)一人当たり財政収入とその伸び率、(12)文化的な生活、の12項目を掲げ、従来と比べて、よりバランスの取れた評価方法を採用するようになったのである。しかし、12の項目は並列で表記され、優先されるべき項目を明示するには至っていなかった経緯がある。
こうしたなか、今回の総合計画が、省エネ・汚染物質排出削減を「一票否決」と位置付けたことは、中央政府が取り組みに本腰を入れたものとして高く評価される。今後は、総合計画の厳格な運用により、実効性を如何に高めるかが鍵である。中央に報告される数字だけが改善を示し、実態が伴わないなどということはあってはならないと、北京で生活し日々大気汚染を実感する筆者は切に願う。
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- 執筆者紹介
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調査本部
主席研究員 齋藤 尚登
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