「偉大なる」会社とは-ビジョナリーカンパニーについて

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2007年06月13日

  • 牧野 潤一
ベンチャーの先駆けとして、名をはせた企業の不祥事が続いている。堀江貴文被告に2年6ヶ月の実刑判決が出たことは記憶に新しい。ライブドアの前身、オンザエッジの社長だった頃、彼のインタビュー記事をみたことがある。若さあふれ、夢いっぱいに会社経営を語る姿に感動を覚えたものだ。実刑判決が出た当日、裁判長は判決理由を読上げた後、堀江被告を諭すため、地裁に届いたある手紙を紹介した。ハンディキャップを持つ子供の母親からのものだった。『大きな夢を持ち、会社を起こし、上場企業までにした被告に対し、憧れに似た感情を抱いて、働く力をもらった。貯めたお金でライブドア株を購入して今でも持ち続けている』という。

以前読んだ「ビジョナリーカンパニー2・飛躍の法則」(※1)という本を思い出す。著者ジェームズ・C.コリンズが、米国の各企業のトップについて調査。企業を飛躍させる真のリーダーシップとは何か、「偉大なる」企業とはという命題で、数年にわたるフィールド調査と討議を重ね、結論を出している。

 「偉大な経営者は、派手さやカリスマ性とは縁遠い地味なしかも謙虚な人物だった。その一方で、勝利への確信を持ち続ける不屈の意思を備えて」いる。「謙虚で、物静かで、控えめで、内気で、恥かしがり屋」であったと。「真に偉大なリーダーとは、アイアコッカでもウェルチでもない。マスコミに取り上げられ、華々しい印象のある経営者は、いわば『刈り取る人』であり、偉大なる経営者とは、いわば『種をまく人』のことなのである。種をまくリーダーは後継者を育て、自分が引退した後も企業が持続するために見えない努力をする。結果として、彼らは株主に長期にわたって恩恵をもたらしているのである」と。

堀江被告の判決当日、ワタミ株式会社長 渡邉美樹氏はブログで「エッジ時代から追いかけていた青春が終わった」と一言。「偉大なる」会社経営とは、『夢』でも、『憧れ』でも、『青春』でもなく、ただ、そこにあるのは、厳しく地道な現実というものなのかもしれない。

(※1)「ビジョナリーカンパニー2・飛躍の法則」  ジェームズ・C.コリンズ  日経BP出版センター  2001

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