中国とインドの政治指標
2007年06月06日
| 5月末の政府発表によれば、インドの2006年度(06年4月~07年3月)の実質GDP成長率は9.4%となった。いまやインドは中国に続く、或いはそれに並ぶ高成長の核としての地位を確固としつつある。 インドと中国は少なからぬ共通点を持つ。共に10億超の人口大国であり、多民族国家でもある。国有経済中心の運営を長く続け、その行き詰まりから自由化、対外開放に方向転換したことが高度成長のきっかけになった点でも共通している。台頭するインドの将来像が論じられる際に、中国との比較に言及されることが多いのも、こうした共通点の存在ゆえであろう。共通点を整理することで、差異が際立つということもある。 さて、世銀が作成している“Worldwide Governance Research Indicators”から横軸に「政治的安定性、Politically Stability/No violence」をとり、縦軸に「民主化度、Voice and Accountability」をとった散布図を描くと、概ね右肩上がりとなる。ここからA→B、B→Aという因果関係の存在が直接導かれるわけではないが、ともあれ政治的に安定している国の多くは民主化度も進んでいるという事実は示される。もちろん、例外はある。特に、中国、インドはそこに政治が絡んだ途端に共通点よりも相違点が目立ち始める。 中国は傾向線のはるか下に位置するが、これは、政治的安定は比較的高い一方で、民主化度が著しく遅れていることを示している。インドは逆に民主化度は高いが、政治的安定性に欠ける。なお、こうした政治関係指標は所得水準と正の相関関係にあり、図の右上方に位置しているのは先進国、左下には途上国、新興国が集中している。やはり因果関係を特定するのは難しいが、中国についてはいかに民主化度を高めるか、インドについては政治的安定性を確保してゆくことが、経済発展の上からも長期的な課題であるとは言えるだろう。 特に、民主化度と政治的安定性が、共に所得水準の上昇に連れて高まるとすれば、政治的安定を確保するために民主化の進展は抑制せざるを得ないという、両者のトレードオフを強調する中国の立場は正当化されにくいことになる。実際にも、共産党が権力を保持するために経済成長を優先するという開発主義(開発独裁)はフェードアウトし、ある程度の民主化を容認することで、一党独裁の最大限の延命を図る展開に移行する可能性が高いのではないか。 インドは確かに宗教対立や隣国との不安定な関係などから、テロの脅威と無縁とはいえないし、絶えざる政権交代の脅威が大衆迎合政治を招くリスクを抱え続けている。しかし、同国の政治指標の特徴は、所得水準対比で高度な民主主義を実現しているということであり、一人当たり年間所得が1000ドルに満たない国として、政治的不安定が特に目立つわけではない。図では示さなかったが、司法の独立などからなる“Rule of Law”指標でもインドは中国よりもはるかに高く位置している。現時点における政治的安定性の劣位にかかわらず、将来に向けて安定性が脅かされるインドのリスクは、中国のそれを大きく下回るとみなしえるのではないか。
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