IT革命と選挙

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2007年05月24日

  • 山中 真樹
先般、各地で知事選や県議選が行われ選挙イヤー2007の本格的なスタートとなった。今後のわが国の政治状況に大きな変化をもたらす可能性のある選挙であり、国民の関心も高いものがある。そうした政治的関心とともに、今回の選挙においては、インターネット等に代表されるIT革命の進展と選挙との関係が注目を集めている。

これまでの当該関係に関する議論は、政治家(候補者)が選挙運動等にITを活用することのあり様如何といったものが多かったように見受けられる。例えば候補者が政治活動・選挙運動のひとつとしてインターネットのホームページを活用することの是非、規制のあり方はどうあるべきかといった議論である。

ところが、ここもとのIT技術等の一段の進展や関連するサービスの拡大、多様化等を受けて、有権者サイドないしは一般国民サイドが選挙に関連してITを活用することのあり方にまで議論が拡大してきている。一般個人が極めて低廉なコストで容易に不特定多数に対し情報(とりわけ映像、動画等)を発信することが可能になったことが選挙の公平性や公正性に大きな影響を与えかねないという問題である。

新聞報道等によれば、東京都知事選において特定の候補者の政見放送が動画投稿サイトに投稿され、これに対し都の選挙管理委員会が公職選挙法に抵触するかの判断は難しいものの、選挙の公平性の見地から当該動画投稿サイトにその動画の削除を要請したとのことである。

また、現下の情報通信技術を活用すれば、所謂「出口調査」なども個人レベルで簡単に行うことが可能となろう。現在、報道機関等が行っているこれまでの「出口調査」においても、「開票率が0%の段階でも当確がでてしまうのは妙」との批判をはじめ、一般には投票終了時まで公表されない調査結果が(一部の関係者には)終了前に伝達され、それが選挙に影響を与えているのではないかとの問題が指摘されてきた。こうしたことを個人レベルで行い得る場合、選挙の公平性や公正性をどのように考えるべきなのか、深刻な問題が生じることが予想される。

IT革命の進展と選挙との関係については、公平性・公正性の見地から厳格な法的規制をかけるべきだとの意見から、(利用コストが大幅に低下した今日)全面的に自由化した方が公平だとの意見まで幅広いものがあろう。いずれにせよ、民主主義の根幹に係る問題でもあり、全国民的に議論が深まることを期待したい。

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