米国の携帯電話の活用は本当に遅れているか?

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2007年05月17日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主席コンサルタント 中島 尚紀
米国で携帯電話が話題になる際、日本や韓国の先進的な事例を元に、今後のビジネス展開が議論される事が少なくない。確かに市販されている電話や提供されているサービスを見れば見るほど、日本と米国との差を感じる。

では、活用の観点でも米国の携帯は日本に比べてそんなに遅れているのか?ここ1年半ほど米国で生活してきた経験からは、特定のビジネス分野ではむしろうまく活用できているのではないかと考えている。それは、投資銀行を中心とした一般企業や政府系機関の管理職、また弁護士などによる、会社のメールが読める携帯電話の利用についてである。喫茶店、地下鉄内、さらにエレベータの中ですらもメールを読んでいるビジネスパーソンの姿をしばしば見かける。端末は古いものも多く決して洗練されていないが、「会社のメールがそのまま送られてくる事」がこれ以上なく有効に活用されている。

大量のメールを読みこなし、必要に応じて適切に対応する事が、管理職にとって極めて重要な業務となっている。携帯で対応することで、どこにいてもあたかも会社にいるかのように仕事ができるようになったため、利用が拡大したのである。逆にいえば、勤務時間に限らず帰宅後・出張中・休暇中でもメールに対応することは必須であり、それに容易に対応する方策として携帯が利用されているのである。

つい最近、それを象徴するような事件があった。4月に入り、あるモバイル会社のネットワークが半日以上不安定な状態が続き、メールのやり取りが困難になった。米国では電話回線のトラブルでもあまり報道されることはないが、この障害は珍しくかなりの報道がなされていた。そういえば、昨年特許関連でネットワークが停止するかもしれないと話題になった際も、大騒ぎになった。このネットワークは電話以上に不可欠なものと、広く認識されていることの証でもあるだろう。

振り返れば、日本では一般消費者の分野だけではなく様々なビジネスユースを対象に携帯が利用されているものの、会社と携帯のメールが統合されているということはあまりない。セキュリティへの対応が厳しい点からも、携帯に別途メールするという対応がなされる事も多い。それもひとつの手だが、マンハッタンの街中で延々と携帯電話に対峙する姿や、携帯からタイミング良く送られてきたリプライメールを見るにつれ、米国のやり方のほうが出来ることは限定されているものの実は作業効率もレスポンスも優れているのではないかと感じる。また、それによりビジネスのスピード、そして生産性も高まっているのではないかとしばしば思うのである。

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中島 尚紀
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