世界の国債市場は88年以降で最もボラティリティーが低下

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2007年05月14日

  • 奥原 健夫
日米欧の国債市場は、2007年度入りしてから10年債利回りの金利変動幅が0.1%から0.15%になるなどボラティリティーが大幅に低下している。また現在のボラティリティーの水準は88年以降で最も低下した局面に位置している。米国の政策金利の据え置きが長期化し、また政策上では中立型となっていることや、日欧も金融政策の変更が行われていないことが影響している。しかしながら長期金利は金融政策だけでなく、景気、物価やクレジット動向とその期待変化によって変動する。

サブプライム・ローンの問題をきっかけにMBS(Mortgage Backed Security)などのクレジット・スプレッドが拡大したまま高止まりしている状況下で、株価が高値更新となるなど、信用リスクを背景としている商品が異なる動きとなっていることが影響していると考えられる。ポートフォリオでみた場合、クレジット・スプレッドの拡大リスクが残る米国資産担保証券や社債の保有よりも、流動性が高く、またパフォーマンスの高い株式への選好が高くなり、同時に社債よりも国債の選好が高まり易い環境であると言える。従って株式市場の動きは金利上昇要因であるものの、その一方で社債市場は金利の低下要因であるため、リスク資産との関係からは、国債市場が一方向に金利変動しにくい状況と言える。

ところで、2006年後半は株高・債券高(金利低下)局面となったが、金利低下が米国の景気と住宅市場を下支えする状況であり、クレジット・スプレッドが縮小基調となり、株式市場と連動した動きであった。

以上のことからは、株式市場が調整局面となれば、債券市場は金利低下となり、ボラティリティーが上昇すると考えられるが、現在のようにクレジット・スプレッドが高止まりした状況下で株式市場が高値圏で推移することになれば、レンジでの推移となりやすく、ボラティリティーも低下した状況が続きやすいことになる。

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