中途採用者活用の勧め

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2007年05月07日

  • 川岡 和也
企業の中途採用が増えている。主要企業の2007年度中途採用計画では、2008年春の新卒を含めた採用計画全体に占める割合でも平均九人に一人が中途での採用となっている(日本経済新聞2007年4月30日)。即戦力となる優秀な人材の確保という狙いと共に、製造業を中心として不況時に採用を控えた若年労働力の補充という位置付けも含まれている。

他企業において経験を積んだ若手転職者に対する企業ニーズが高いのは容易に想像できるが、これを機に、必要とされるスキルと人格を備えた人材であれば年齢に関係なく採用される時代に近づいていくことを期待したい。企業の採用活動そのものが好況時には拡大傾向だが不況時には抑制方向となりがちという点は今後も繰り返される現象であろうが、これからは一昔前のような学校を卒業してすぐに就職し定年まで勤め上げる“生涯一企業の正社員”という働き方は一般的なものではなくなってくる。様々な経験やスキルを持つ社員が集まり、多様な働き方や価値観のもとで企業が最大の力を発揮するためには、人事処遇や賃金体系を年齢や勤続年数といった年功ベースの昔ながらの正社員を中心とした考え方から改める必要がある。とりわけ人事配置・人事評価や人材育成の基本的な考え方を多様な経験・スキルを活用して常に新しい発想を取り入れていく方向に作り変えていく必要があるだろう。

具体的な試みとしては例えば、“管理職層の一定割合以上は中途採用者で占める”という人材配置上の社内基準を設けるというのはどうだろうか。ここでの中途採用者の基準としては「他企業あるいは他の企業グループでの就労経験○年以上」というような条件を設定し、規模の大きな企業では、企業内のエリアや事業本部毎にその制約を課しても良い。もちろん、単純に他社での経験を持つ者がリーダーとして相応しいわけではなく、重要なのはその経験を通して培われた幅広い見識と柔軟な発想に基づく対応力である。だが、企業活動の具体的な成果や方向性に直接的な影響が大きい管理職を いわゆる一企業 =“偏った価値判断基準に陥りやすい世界”で経験を積んだ者だけで構成するのではなく 多様な世界を実感を持って経験したメンバーを組み入れることにより、企業を硬直的な考え方にとらわれない発展的な方向に導くことが必要ではないだろうか。いずれにせよ、これからの企業経営にとって、中途採用者をイレギュラーではない通常の採用形態として活用し、そのことが組織内で最大の効果を発揮するために、新しい時代に対応した試みや工夫を企業毎に模索していくことが重要である。

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