デジタルとアナログ

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2007年05月01日

  • 原田 泰
4月中旬に北京と天津を訪問した。天津では新しい工業開発地区と港を見せていただいた。港の埠頭は37キロメートルもあり、そこにクレーンが数限りなく並んでいる。横浜港や神戸港の地位が低下していると言っても、こんな港と競争しようというのは土台無理だ。

天津の工業開発区にはトヨタ、モトローラ、サムソン電子、ネッスル、グラクソ・スミスクライン(製薬)などの工場が立ち並び、エアバスも進出するという。エアバスの工場は18キロメートルもあり、部品を搬入して組み立てて、最後は滑走路から離陸して購入先に飛んでいくという。

中国ができないこと、日本ができること、できることとできないことを組み合わせてウィンウィンの関係を作るしかないと感じさせられる。互恵的戦略関係とはそういうものだろう。中国に駐在の日本の方によると、実利的戦略関係なのだそうだ。

躍進著しい中国国産車の一部のエンジンは日本製である。一部の国産車でも大変な数になる。パソコンの“インテル入ってる”の自動車版である。エンジンを供給している日本の自動車メーカーとしても、代金回収も面倒な中国で1台1台売るよりも、大量にエンジンを売った方が利益があるのだろう。相互に、急に売らない、買わないとなったら大変な損失を被る。かつては、自分が損をしても相手にはもっと損をさせることができるという脅しが効いたかもしれないが、現在では、そんなことは不可能になっているだろう。実利的戦略関係が広範に成立している。

天津の信号は発光ダイオードが使われている。3連式ではなくて、一つの大きな信号の色が変るのでとても見やすい。遅れていたから最新式のものを一挙に取り付けることができる。デジタル時代の進歩は速い。

天津で宿泊していたホテルは立派だったが、その朝食バイキングで、コックはオムレツを作れなかった。うまくまとまらずスクランブルエッグのようになってしまう。デジタルの進歩は速いが、アナログの進歩はなかなか進まないようだ。

できること、できないことは、ハイテクだけでなく、あらゆる分野にあると感じた。あるいはデジタル文化導入の利益が大きすぎるので、アナログ技術に習熟することの利益が小さいだけなのかもしれず、中国の成長率の落ち着きとともに洋食文化の移入も順調に進むのかもしれないが。

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