桜の花の下で想う

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2007年04月27日

  • 菅原 晴樹

4月上旬、急に思い立って桜を観にひとりで京都へ行きました。まずは大津の三井寺の手前にある琵琶湖疏水の桜並木へ。そこはまさに「桜吹雪」。桜は何と言っても「散り際」が美しいです。次に浜大津から京阪電車に乗って平安神宮神苑へ。満開の紅枝垂桜の枝ぶりは見事で、しばしその姿と鮮やかな色の美しさに目を奪われました。

そして、金閣寺の裏手にある、原谷苑。入園料は高いのですが、咲き乱れるさまざまな桜は一見の価値があります。

そのあとは、仁和寺の御室桜、遅咲きなので少し早すぎました。そして、竜安寺の油塀の後ろに一本だけ咲いている枝垂桜。枯山水の庭には、似つかわしくないほどの艶やかな咲きぶりでした。京都駅に向かう途中、賀茂川沿いの「半木の道」を歩いて、あわただしい花見を終えました。行く先々で目立ったのは、カメラを提げた仲睦まじい老夫婦。

ふと頭を過ぎったのがこの4月1日からスタートした「離婚時の厚生年金の分割制度」のこと。我々サラリーマンを震撼とさせた事件(!)です。

制度導入の背景は、近年、中高年者の離婚件数が増加し、現役時代の男女の雇用格差・給与格差などを背景に離婚時の夫婦双方の年金受給額に大きな差が生じるためです。この4月から離婚時の厚生年金の分割制度が、来年4月から離婚時の第3号被保険者(妻)期間についての厚生年金の分割制度がそれぞれ導入されます。

分割の按分割合を決めるために必要な情報は、昨年10月から社会保険庁に請求することができるようになりました。聞くところによると、請求者の圧倒的多数は女性だということです。

世帯主60歳以上の老後世帯の生活費は最低限で月額24万円、ゆとりある生活をしようとすれば38万円程度が必要です(総務省統計局「2005年家計調査年報」より)。

もし、熟年離婚して年金を分割したら、夫婦で月額23万円程度の受給額がそれぞれ概ね半減してしまいます。一人暮らしとはいえ、さすがに10万円ちょっとではやっていけません。もちろん、京都への花見など夢のまた夢・・・・・

今日、ひとりで来たことを後悔しつつ、数年後に迫った退職、そして、その後の年金生活を迎えるにあたって、家族への感謝の念と労わりの気持ちを忘れないようにと心新たにしてのぞみに乗り込みました。

(でも、上賀茂の大田神社のかきつばたが咲く頃には、そんな気持ちも薄らいでいると思います。たぶん・・・それに、もう、手遅れかもしれません。)
 

ひさかたの 光のどけき 春の日に
しづ心なく 花の散るらむ (古今和歌集 紀友則)

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