「小さな政府」による財政再建?
2007年04月25日
日本の財政状況の厳しさは広く知られるようになっており、その行方は今後の日本経済にとって最大の懸念事項である。
財政再建について政府が能動的に対処することが出来るのは、行財政改革、税制および社会保障制度の変更などを通じて、支出を削減し受取を増やすことである。1980年から2003年までを対象に、詳細なデータの比較が可能なOECD加盟国について、一般政府の純債務抑制に最も遠い状態にあった年から、政府純債務残高対名目GDP比が低下傾向に転じた年までの財政再建期間を比較すると、支出の削減に強く依存しているのは、ベルギー(1981-1994年)、オランダ(1982-1996年)、スウェーデン(1993-1997年)、英国(1993-1997年)である。逆に、米国(1982-1996年)は支出削減への依存度はそれほど高くはなく、オーストラリア(1992-1996年)、カナダ(1983-1996年)、イタリア(1985-1995年)もこれにあてはまる。
この差は、財政再建の起点時における一般政府の支出・受取規模と関係しており、前者のグループは後者のグループと比較して、政府支出・受取の規模がいずれも対GDP比で総じて高い水準にある。社会構造や制度の違いが存在するとしても、政府支出が低水準であるほど、支出削減の余地は相対的に限定され、それに強く依存した財政再建が難しいことを示唆する結果と考えられる。
現在の日本にあてはめると、財政再建の起点となる2002年において、一般政府の支出・受取の規模は、米国やオーストラリアに近い値である。つまり、日本は低支出・低受取のもとで支出削減に強く依存するやや例外的なスタンスを志向しつつある。現在の時流は「小さな政府」だが、それが単に政府支出規模の更なる抑制(を通じた財政再建)を意味するのであれば、その実現は容易な道のりではないことが予想される。
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