3月決算会社の業績発表スタート ~保守的業績予想に警戒感

RSS

2007年04月24日

  • 三宅 一弘
今週以降、3月決算会社の業績発表がスタートする。06年度通期と下期の業績数値は上ブレして着地する一方、07年度の今期予想は非常に控えめな値でスタートする公算が大きい。06年度業績の上ブレで発射台が高まり、07年度の予想増益率が下押しされるといったややテクニカル要因に加えて、特に好調な輸出関連(外需関連)企業などでは、(1)想定為替レートを円高水準に設定する、(2)米国など海外事業の売上高の伸びを堅く(低く)見積もる、といった形で控えめな業績予想になりそうである。加えて、資源・エネルギー関連企業などでは、上記の為替前提や外需に関する保守的前提などに加えて、商品市況の価格見通しなども下落を見込み、控えめな業績予想になりそうである。さらに、07年度から減価償却制度の税制改正が実施され、従来基準に比べて経常利益が3~5%程度下押しされる可能性がある。

現状、東洋経済予想ベースで東証1部企業(除く金融)の06年度予想の経常増益率(前年比)は+7.9%、07年度が+9.2%である。これらには、減価償却制度の変更は加味されていない。おそらく07年度予想の経常増益率は、上記の保守的前提に加えて、実績(06年度経常利益)が前年比+10数%増益へ上ブレして着地し、発射台が高まることによる下押しと、減価償却制度の変更に伴う下押しなどから5月段階では会社予想ベースでほぼゼロ前後(場合によれば、東証1部全体で減益予想)になり、東洋経済予想でゼロ~+数%程度の低い増益予想になりそうである。

市場参加者の間では、このような「期初の保守的業績予想値が期を追うごとに上方修正され、最終的に4月下旬~5月の本決算発表時に、さらに上ブレして着地する一方、新しい年度の今期予想は非常に控えめな値でスタートする」といった近年みられる日本企業の業績修正パターンを理解しているとみられるが、今年5月においても、現実に見た目の今期業績予想数値が芳しくない場合、失望売りや利益確定売りを招く可能性が高いと考えられる。特に日本の株式市場で6割前後の売買代金シェアを握り、影響力の大きい外国人の投資動向をみると、過去数年、5月前後に売り越しになっており、2003年以降、5月前後に株価が年度内安値をつけるケースが多くなっている。

中長期的にみれば、08年8月の北京オリンピックや08年11月の米国大統領選挙を控えており、また今回の世界同時株安で投資家心理が一旦冷やされたため、今年後半の米国株をはじめとする海外株式市場は上昇相場の色彩が強まりそうである。日本株は年央のハードルを乗り越えれば、7~9月期以降、期を追うごとに業績上方修正が進み、再編・M&Aの活発化や株主還元強化が見込まれ、さらに海外株高のフォローの風も加わり、出遅れ是正に動く可能性が高いとみる。このような見方が正しいならば、今後数ヵ月間に予想される調整相場は、価値ある銘柄に対する押し目買い好機とも言えそうである。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。