中国のニューリッチ台頭から恩恵を受けるのは?

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2007年04月16日

  • アレックス・ファン
20年前のアジア先進国・市場(香港、台湾、韓国)では、円高とそれに伴うアジア通貨高と低金利環境を背景に、株式市場と不動産市場の強気相場が進行した。今日の中国でもこれに似た状況がみられる。

例えば、中国人民銀行による人民元改革(※1)の発表をきっかけに、人民元高が進行している。株式市場でも、全株流通改革(※2)の進展やA株新規上場の再開などが好感され、4年にわたる長期下落局面にあったA株市場は、2006年後半から急騰に転じた(※3)。都市部での不動産価格も05年に9.4%、06年に5.4%、それぞれ上昇している。一方、ここ2年間はインフレ圧力が小さかったこと、そして中国政府が利上げによる悪影響を懸念したことから、金利は低水準に据え置かれている。

歴史が繰り返すのであれば
過去にアジア先進国では、通貨高や株式・不動産市場の急騰に伴うニューリッチ層の台頭が、高級品への支出増、不動産と株式へのさらなる投資、資産運用や生命保険への需要につながる傾向がみられた。歴史が繰り返すのであれば、1)不動産、2)自動車、3)高額商品小売、4)海外旅行関連、5)銀行・保険、の5つの産業が、中国でもニューリッチ層の購買力向上から最大の恩恵を受けるだろう。

まず、中国で不動産市場を力強くけん引してきた急速な都市化と世帯所得の増加が、今後も不動産の需要拡大をサポートするだろう。株式投資で得た利益を頭金の一部に充当するなど、ニューリッチからのさらなる不動産需要が予想される。次に、乗用車の価格低下と所得増でマイカーが手の届きやすい存在となりつつあることから、自動車市場もかなりの成長が見込めるだろう。そして、宝石や高級腕時計などの高額商品は、ニューリッチ層にとってはステータスシンボルであり、株価上昇による臨時収入で購入するにも手頃である。また、海外旅行に対する規制緩和や可処分所得の上昇により、海外旅行需要の増加が続き、旅行代理店や航空会社の利用につながるだろう(※4)。さらに、高度経済成長に伴い、銀行の個人向けサービスと資産管理にはまだ大きな開拓の余地があるため、中国の地場銀行にとってビジネスチャンスは大きい。保険についても、人口の多さ、政治の安定、経済発展という生保市場拡大の3つの条件を満たしており、しかもGDPに占める収入保険料の比率が先進国平均より低いため、市場成長が期待される。

中国政府は景気のけん引役を、従来の投資と輸出から、国内消費にシフトすべく努力している。したがって、株式投資という観点からは、07年にも香港などで上場する国内消費関連銘柄の株価パフォーマンスに期待できよう。

(※1)従来の対米ドル固定相場制から、米ドルを含む多通貨バスケット制に移行し、人民元の対米ドル為替レートを約2%切り上げた。2005年7月21日発表。
(※2)非流通株式(国有株や法人株など)を、既存の流通株株主に配慮(現金や株式による補償など)した上で、市場に放出する改革。
(※3)上海深セン総合300指数は05年6月の底打ち時から今週末までに4倍ちかく上昇した。
(※4)さらに北京オリンピックが開催される08年には、中国の観光客受け入れも大きく増える見通しである。

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