売買単位数の収斂進む、株式市場!

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2007年04月12日

  • 吉川 満
この間、関連会社の大和投信の、委託会社で、団塊の世代の方を主な対象に、投資の説明会があったんです。そこに私も足を運んでみました。いやぁ、びっくりしました。すごい熱気なんです。

団塊の世代の方というと、ちょうど退職を迎えるタイミングなんですね。年金を受け取れるまで、まだ5年程度待たなければならない人も多いのです。そういう人はこれからの生活を考えて、人生を託すべき投信を選んでいるのです。みんな真剣ですから、怖いくらいです。混んでいるせいもあるんですが、個人がそんな風に、預金以外の金融商品に頼ろうとする時代が来たんですね。思わず圧倒されてしまいました。もちろん団塊の世代といえば人数も多いのですが、ことほど左様に、証券投資で積極的に人生を構築していこうという意欲は高まっているのです。

そんなことを思いながら、この間の日曜日、朝刊を開きました。産経新聞の5面に、ちょうど「株式『売買単位』下げ急増、個人投資家を後押し」という記事が出ているのが目に付きました。株式の売買単位を引き下げる企業が相次いでいるというのです。なるほど従来であれば、たとえば1000株からでないと買えなかった株が、100株からでも買えるようになれば、個人投資家でも、株式が買いやすくなります。その意味で売買単位株式数の面でも、個人投資家にフォローの風が吹いていると申せましょう。けれども売買単位は、ただなんでも小さくなればいいというものではないのです。

一昨年末に、ジェイコム株の誤発注事件があったことを思い出しませんか。というと、ああー、そうだった、忘れていた。と、頭を掻く人もあるかもしれません。2005年12月8日、東証マザースに新規上場したジェイコム株の売り注文(61万円で1株)を、売買を扱った某証券会社が1円で61万株と、誤入力・誤発注してしまい、大変な騒動になった事件がありました。その証券会社は誤発注から一分半後には誤りに気づいたのですが、注文を取り消そうにもシステムがうまく作動せず、時間がたってから買い戻し処理を進めましたが、407億円も損失が発生してしまった。事件は今も係争中で最終的な責任の所在は確定していません。まあ、ジェイコム株事件は、規模からいってシンボルともいえますが、誤発注事件はこれだけではありませんでした。2001年11月、2001年12月、2003年7月にも、別の3つの証券会社がすでに誤発注事件を起こしていました。また、ジェイコム事件直後の2006年1月にも、さらに別の証券会社が誤発注事件を起こしたのです。こうして株式分割が無秩序に行われるのでは、人間が行う証券事務の対応が間に合わない、と言う認識が急速に高まりました。

そうです。売買単位は単に小さければいいというものではないのです。あまりに多様化したのでは、人間の処理能力を超えてしまいます。多様化した売買単位を放置したのでは、今後も事務ミスによる誤発注事件が多発することは目に見えています。私の新聞紙上での提言などもあって、こうした認識が急速に高まり、最近では1000株か100株に売買単位の収斂は急速に進んでいます。東証の考えるように年内に1000株か100株への収斂が完了し、金融庁の意向と伝えられるように、平成21年には売買単位の一体化が完了することを強く望む次第です。

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