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株価上昇未だ道半ばのアジア市場

2007年03月27日

由井濱 宏一

3月中旬に再び急落した米国市場の影響をアジア市場も大きく受けた。香港、中国H株、シンガポール市場など06年後半以降、海外マネーを大量に吸収してきた市場ほど相対的に下落率が大きく、流動性主導で上昇してきた市場のリスクをまざまざとみせつけた格好だ。既に様々なところで指摘されているように今回の株価下落の本質的なところは、米国のサブプライムローンに端を発した米国景気の先行き懸念である。米国住宅市場の調整が個人消費全体の落ち込み/米国景気失速→アジア地域からの輸出の落ち込み→アジア全体の成長率の大幅な下落、といった連想が働いたのだろう。

しかし、今回の株価調整は過剰反応に過ぎないだろう。そう考える理由として2点ある。まず、米国のサブプライムローン市場の調整が消費全体に及ぼす影響である。サブプライムローンの残高が全体に占める割合は様々な推定があるようだが、概ね10%弱といったところ。その部分での焦げ付きが上昇したからといって米国消費全体が大きく落ち込むとは考えにくい。しかも、04年~05年にかけて住宅市場がまだ好調だったころでさえ遅延率は10%を超えている。信用力の低い借り手は環境が良かろうが悪かろうが、一定水準の遅延率を抱えてしまうということである。直近の統計(06年第4四半期)では、当時の水準から3%弱上昇したわけだが、この上昇分をもって、ただでさえシェアが小さいサブプライムローン保有者の消費減速が米国景気全体に有意な影響を及ぼすとは考えにくい。事実、同ローンの返済遅延率が上昇し始めた06年以降をみても、米国の小売売上高の伸び率は比較的堅調に推移している。賃金上昇、雇用拡大、富裕者層の資産効果よる積極消費などが背景となっている。

また、たとえ米国消費がこの先軟化したとしても、それがアジアからの更なる輸出減退を加速する可能性は低いのではないか。高成長が続く中国向けへの輸出が伸びており、ある程度相殺できると思われるからだ。これは中国が01年年末にWTOに加盟し市場を開放して以降、かなり顕著となっている。01年~02年にかけて米国消費活動はITバブル崩壊の影響もあって大きく落ち込んだが、アジアからの輸出の伸びは健全な伸びを示している。この時期に韓国や台湾などからの中国への輸出が急増したことによる。特に韓国、台湾にとって中国は輸出相手国としてトップの位置を堅持している。こうしたことが米国消費減速によるネガティブな影響をある程度吸収したと思われる。今後、中国の経済成長は、政府による内需拡大のかけ声のもと、民間消費の貢献度が高まっていくと思われる。以前ほど、米国消費減退のアジア輸出への影響は深刻ではないだろう。

となると、今回のアジア市場の調整は、これまでの急ピッチな上昇で買いタイミングを逃した投資家にとって願ってもないエントリーポイントになる可能性がある。香港で大手企業の決算発表が終了し、アジア主要国の好調な内需関連指標、韓国や台湾などからの巡航速度の輸出伸び率、米国の消費関連指標の落ち着きなどが確認されればアジア市場は再び力強い上昇を開始するだろう。中国市場を除けばアジア市場全体に割高感は見出せず、株価上昇未だ、道半ばである。今年半ば以降、米国景気のソフトランディングの可能性が高まる前に、景気敏感セクターへの組み入れ比率を引き上げておくべきだろう。

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