米国サマータイム期間拡大への取組み

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2007年03月19日

  • 古井 芳美
米国およびカナダでは、2007年よりサマータイム(DST、Daylight Saving Time)の期間が一ヶ月拡大した。この拡大措置は、エネルギーの効率化をめざしたエネルギー法案(Energy Policy Act of 2005)が2005年に可決されたことによる。これにより、2007年からはDSTの開始が三週間早まり3月の第二日曜日から、終了が一週間遅れ11月の第一日曜日までとなった。今年は既に3月11日からサマータイム入りしているが、今のところ目立ったトラブルは生じていない。なお、これまで両国と同期を取ってきたメキシコは従来通りのサマータイムスケジュールを維持する。

今回のDST期間の拡大では、社会システムに影響を与えかねないという点で2000年問題(Y2K)に類似した備えが必要とも言われていた。一方、Y2Kに比べ全社的な情報システムに与えるインパクトが分かりにくいともされていた。なぜならば、Y2Kの対応時に比べ、今回の変更が幅広い人たちにあまり意識されていなかった点が挙げられる。したがって、情報提供や勧告があまりなされておらず、社内全体にかかわる問題としてCEOなど企業の上層部レベルまで認識されていなかった。サーバ管理者やアプリケーションの支援部隊といったIT部門のみが今回の変更をシステム停止に繋がりかねない重大な問題と認識していた反面、ビジネス部門での認知度が低かったのである。

そのような中でも、証券・金融取引業者協会(SIFMA)では、DST変更をBCP(事業継続計画)の一環と捉え、対策の情報や注意点などを取り上げた。ウェブサイトには、SIFMAの会員とベンダーによる電話会議の議事録、各ベンダーの関連ウェブサイト一覧、DST対応に関する掲示板、DST対応のチェックリスト、変更当日に実施される企業間テスト手順などが掲載されている。このように、業界全体で情報交換の場を設けることで、対応時における疑問・問題点を他の企業と共有し、ベンダー、取引所から回答を得られる場を設け業界全体で一丸となって対応した。

結果的に中小企業や個人のパソコンでは対応が十分でなかったケースもあったが、金融機関をはじめ大手企業では、準備がうまくいった結果、大きな問題・混乱は発生しなかった。もっとも、各社のIT部門では移行当日の深夜に立会いを実施するなど、例年のDST変更に比べて十二分な対応を行っていた。

日本でもサマータイム導入の話題はしばしば出ている。DST制度導入に際してはシステム面で大幅な対応が必要であるため、各種業界を代表する団体が主導となり、業界全体で対応していくことが望ましい。その結果、企業の上層部レベルが重要な問題であることを認識し、適切な対応が行われるのではなかろうか。

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