シニア層と金融情報

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2007年03月16日

  • 本谷 知彦
団塊世代の金融資産の取り込みをねらった、魅力的な新商品の発売や工夫を凝らした新サービスの展開は、今、金融業界におけるホットな分野のひとつであろう。これは直近の話題ということで、目線を未来に向けてみたい。以降の世代、いわゆる「ポスト団塊世代」も、いずれは数年後に定年を迎える。又、それ以降の世代も経年と共に同様の状況を迎えることとなる。それぞれの世代が、その時いかほどの金融資産を保有するのか、正確な予測をはじき出しているわけではないが、極端に増減するわけでもなく、それなりの金額を保有することになろう。

総務省通信利用動向調査によると、50歳代のネット利用率は、平成17年末時点で75.3%である。年齢の低さと利用率の高さに相関関係があると仮定すると、50歳代前半のネット利用率は、これよりも高いと予測できる。ちなみに40歳代は90.6%。インターネットが普及し始めた平成8,9年頃、ポスト団塊世代は中間管理職時代であり、必要に迫られて、オフィスソフトやインターネットを使用してきたと思われる。個人差はあれども、情報リテラシーが低くない方々が、結構多いだろう。以降の世代は言うに及ばず。勝手な憶測だが、ネット活用のツボを押さえた人々が、ちょうどポスト団塊世代を境目に、増大しているのではないだろうか。自ずとシニア層(=相対的に他の年代よりも金融資産を多く保有する層)の金融取引行動も、ネットの活用度がさらに上昇すると容易に推測できる。

近年、投信残高が右肩上がりで上昇しているが、その牽引役はシニア層である。投信の売れ筋に共通した属性のひとつに“内容のわかりやすさ”があげられる。そもそも金融商品、特にリスク性金融商品は、内容を直感的に理解し難いものが少なくないなど、本質的に情報の非対称性が存在する。情報収集・理解促進のためにも、ネットの活用は不可欠だ。そこで、ネットを通じた金融情報の収集によって、シニア層における情報の非対称性解消にどのような変化が現れるのか、個人的に非常に興味を持っている。

H.A.サイモンの意思決定論における限定合理性に基づけば、リスク性金融商品を理解することができる情報はネット・リアル共に多数あるが、人々はほどほどの情報収集・理解で商品選定の意思決定を行なっていることになる。リスク性金融商品の選定には、金額の大小に関係なく慎重を要するが、今後の生活設計をより現実的に捉えていくシニア層にとって、商品選定は、より真剣にならざるを得ない。ネットによる情報収集・理解促進が、リスク性金融商品選定における限定合理性に、何らかの変化を与えるものなのかどうか、注目しておきたい。

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