アカデミー賞とゴア

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2007年03月08日

  • 牧野 潤一
2月25日の米アカデミー賞授賞式で、ゴア前副大統領が出演した「不都合な真実」が2部門を受賞した。温暖化へと突き進む地球を憂い、温暖化によって引き起こされる数々の問題を説くドキュメンタリー映画である。僅差で大統領を逃してしまった彼の天命は、ホワイトハウスの主になることではなく、地球環境問題を問い、世論を形成していくことにあったのかと思い感慨をもって眺めた。スピーチでは「これは政治問題ではなく、モラルの問題」と超党派的な考えを述べている。前回のコラムの中でとりあげた英国スターン卿のスターンレビューと共に、世界的に大きな山が動き出した感がある。

さらになお、3つ目の大きな山が2月2日に発表された。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書である。気候システムに温暖化が起こっていると断定し、さらに人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定している。第3次評価報告書の「可能性が高い」より踏み込んだ表現であり、単純な地球の長期サイクルによるものという反論を退けた。このままのペースでいくと、21世紀末には地球の平均気温が最大6.4℃上昇するという。

こうした潮流において、日本の対応は遅々として進んでいない。京都議定書の2008年~12年の第一約束がせまっている中、日本の温室効果ガス排出量は、議定書目標値の達成どころか、05年現在で8.1%も温室効果ガスを増やしてしまっている。

ゴア氏が以前、日本のニュース番組に出演していた時に、こう言っていたのが印象的である。「個人、個人が(地球温暖化についての)意見をもつことが大切なのである。」、個人は無力ではなく、「個々人がそのような考えをもつことによって、企業倫理や企業行動を変えていくのである」と。まずは個々人の環境に対する意識を高めていく必要がある。

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