数理モデル開発」で大切なもの

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2007年02月22日

  • 高林 章夫
私が従事している「数理モデル開発」は、何をやっているのか良く分からないというご意見を頂くことが多い。一体、「数理モデル開発」とはどのようなものであろうか?

おおざっぱに言ってしまえば、「数理モデル開発」とは、
・入力データの収集とその内容の精査
・数理モデル(数式)を用いた入力データの加工
・出力された結果の解釈
という一連のプロセスを指す。

「数理モデル開発」においては、まず数理モデルに入力するデータを収集、精査することになる。製造業においては原材料の品質が製品の出来に大きな影響を与えるのと同様に、「数理モデル開発」においては、入力データの特徴を見極め、データの中に不純物(異常値)が含まれていないかなどの確認を行って入力データの品質を高めることが重要である。

次に品質を高めた入力データを数理モデルによって加工し、目的に沿った結果を出力する。場合によってはこのプロセスのみを「数理モデル開発」と呼ぶ場合もある。

モデル化を行うアプローチによって採用する数理モデルは様々である。またその数学的難易度も、四則演算で表される比較的簡単なものから、高度な数学を用いて分析対象を表現するものまで千差万別である。

最後は、出力された結果の解釈である。数理モデルによって出力された結果は数字の列に過ぎず、無味乾燥なものである。これらに対し、主に言葉による意味付けを行うことによって、出力結果が様々な人に分かりやすくなり、数理モデルによって得られた情報が生きたものになる。

上に挙げた3つのプロセスは一度行えば終わりという訳ではなく、何度も試行錯誤を繰り返していくことが一般的である。

ところで、「数理モデル開発」を行う上で最も大切なものは何であろうか?

「数理モデル開発」においては、「入力データの精査」や「数式による計算」、「出力された数値の解釈」などを行う為、数理的能力が最も大切なものであると思われがちである。もちろん「数理モデル開発」を行う上で、数理的能力が必要不可欠であることに疑う余地はない。

しかし、どれだけ数理的に優れたモデルを開発しても、その有効性をユーザに理解してもらえず、ユーザに利用してもらえなければ、その存在意義はない。

結局「数理モデル開発」で最も大切なものは、
・ユーザが何を欲しているかを的確に捉える能力
・開発した商品(数理モデル)の有効性と存在意義をユーザに理解してもらう能力
であり、その本質的な部分は通常のビジネスと何ら変わりがないのである。

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