少子・高齢化時代の成長ビジネス

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2007年02月15日

  • 櫻岡 崇
女性、シニア層、子供、在日外国人向けサービスの潜在需要

日本社会が人口減少時代を迎え、企業の事業環境が大きく変化するのは間違いない。特に、国内事業環境の変化を象徴する消費者セグメントは、1)女性、2)シニア層・高齢者、3)子供、4)在日外国人と考えられるが、それぞれの潜在サービス需要を考えてみる。

働く女性が増え、女性の収入が増加する一方、晩婚化や少子化が進んでいる。女性向けのサービスでは、「職場での役割の高度化」と「子育て」を両立させたいとのニーズをうまくくみ取ることが重要である。例えば、日常的な行動である家事・育児に対応する家事代行サービス、ベビーシッターなどの時間節約型サービスが十分に提供されていない。

シニア層は、数的拡大が見込まれるセグメントであり、特に余暇時間という観点からは単純な人口比以上のポテンシャルがある。総務省調査によれば、1日当たりのメディア視聴時間は、30代の1時間50分台に対し、60代では3時間超、70代では4時間に達する。今後、団塊世代が退職し、セカンドライフにおける時間消費は多様化するだろう。シニア向けSNSなどは、積極的余暇時間への入り口として期待される。ネット分野で先行する米国では既に顕在化しており、日本でもシニア向けサイトは増えている。もちろん、ネット対応テレビを端末とするサービスを企画するなど、アイデアは必要である。

子供は今後減少を続けるセグメントであるが、将来を担う人材としての貴重さが際立っていくことになる。教育や防犯といった子供たちに有益なITサービスの拡充が期待される。サービスの対価を家計ではなく、企業が負担する広告などのビジネスモデルを想定すれば、当該セグメントに対する見方も変わろう。既に、「ネオペット(米NeoPets,Inc)」や「タグふれんずキッズ(コアカラーズ)」といった子供向けSNSやブログも登場している。

外国人のいる世帯数は、2005年に100万世帯を突破し、5年間で31%も増加した。日本の全世帯に占める割合も2%を超えた。在日外国人に限らず、ニッチなセグメントでマーケティング効率を上げるには、サービスの多重化が効果的である。例えば、MVNO(※1)として3G携帯電話サービス参入が容易になれば、複合的なインターネットサービスの展開も活発化しよう。情報や映像の多国語対応などサービスと端末の最適化に主眼を置けば、ベンチャー企業が手がける余地は大きい。対外国人でマーケティングやブランドに強みを持っていれば、従来サービス事業者に対する差別化も可能である。

大企業の生き残りをかけた戦略もさることながら、新たな時代の付加価値創造の担い手として、ベンチャー企業が当該環境変化を積極的にビジネスチャンスにつなげることに期待したい。

(※1)Mobile Virtual Network Operator:周波数割り当てを受けずに、NTTドコモなど携帯キャリアーのインフラを利用する通信事業者。総務省は、参入促進に向け今年度中のガイドライン改正を目指している。

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