市場金利が示唆するほどには2月利上げの確率は低下していない

RSS

2007年01月25日

  • 奥原 健夫
日銀は、18日の政策委員会・金融政策決定会合(17・18日開催)で、12月に続き金融政策の現状維持を決定した(無担保コール翌日物0.25%、ロンバート貸付利率0.4%)。ただし前回2006年12月は全会一致での見送りであったのに対し、今回は賛成6対反対3(反対3人は利上げを提案)となっている。正副総裁が利上げでまとまれば利上げが可能な状況であり、また審議委員の一部が利上げ姿勢を明確にしたことで市場へのコンセンサス作りが行いやすい環境が整い、2月に追加利上げが実施されるか注目されている。

しかし国内債券市場は、決定会合以降大幅な上昇が続き、1月23日時点では、2月だけでなく年度内利上げがない可能性を織り込もうとしている。2月に発表される10-12月期実質GDPは7-9月期の反動で前期比年率が3%以上となる可能性があるものの、一方でWTIの大幅下落による消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)の前年比のプラス幅縮小の確実性が増しているからである。特に1月26日に発表されるコアCPI(前年比)が現在の+0.2%から+0.1%に縮小した場合には、利上げは不可能との認識が強い。さらに今回の利上げ見送りは政府の圧力がその要因の1つであったとの見方が強く、GDP指標だけで政府が利上げ肯定に傾くとは考えにくいことも背景にあるとみられる。

ところで、エネルギー要因を含むコアCPI(前年比)のプラス幅縮小が見込まれる中、エネルギー要因などの特殊要因を除いた非特殊要因(≒食料(酒類除)及エネルギー除く総合、以下コアコアCPI)はゼロ近傍までマイナス幅が縮小し、今後はプラスに転じると予想される。同指標からは日本がデフレに戻るリスクは小さい。また、信用リスクに問題が生じていた2000年8月のゼロ金利解除時や2005年5月のGMショック時と比較すると、現在のマクロ環境は良好であり、米国の景気減速が軽微との見通しが強まっていることからも、景気後退リスクは小さい。従って金融市場がどう反応するかは別として、利上げによる実体経済へのマイナスの影響は小さくなってきており、最後は日銀が利上げを実施しても問題がないとの確信を貫き通せるかにかかっている。追加利上げを行うには厳しい環境には違いないが、市場金利が示唆するほどには利上げの確率は低下していないと言えよう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。