グローバル市場に臨むロシア

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2007年01月23日

  • 井本 沙織

2006年11月19日、ハノイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の米ロ首脳会談に併せ、ロシアのグレフ経済発展貿易相とシュワブ米通商代表部(USTR)代表は、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟に向けた2国間の合意文書に署名した。難航していた米ロ交渉が合意にこぎつけたことで、ロシア国内外には「大きなヤマを越えた」との感触がある。早ければ07年半ばにもWTO加盟が実現する可能性が出てきた。

ロシア経済は、原油高騰の追い風で順調な成長を続けている。2000年以降の経済成長率は平均7%弱を維持しており、財政黒字に転換し、2006年には対外債務を前倒し返済する、など、経済安定化を果たしてきた。ロシア経済発展貿易省は2006年12月、06年の経済成長予測を6.6%(OECD06年予測は6.2%)から、6.9%へと上方修正した。消費、固定資本投資、建設の急成長がその要因だ。

米ロ交渉は、農業、金融分野、知的所有権の保護関連の話し合いで難航していた。なかでも知的所有権をめぐっては、米国側は、ロシア国内で米国の映画や音楽、ソフトウエアの海賊版が横行していることを問題視し、ロシア側に対策強化を求めてきた経緯がある。米ロ合意で、米国側は「ロシアはWTO知財保護ルールの完全な実行を約束した」と強調したが、その最終結論は多国間交渉へと先送りされた。このため、今回の合意は、中東や北朝鮮問題を背景に、米国がロシアに歩み寄ったという政治的色彩が濃いが、それでも「難しい、時には厳しい」(ロシア経済発展貿易省)2国間交渉の過程がほぼ終了したことについて、ロシア側は喜びを隠さない。

国際法に基づき機能しているWTOに加盟することで、ロシアの経済環境の透明性が向上し、投資環境が改善されることが期待される。近年、ロシアの好景気に誘われ、海外からの直接投資は増加傾向が目立つ。2006年1-9月の直接投資額は、金額は353.23億ドルにのぼり、前年同期比31.7%増となった。WTO加盟はこの流れに拍車をかけることになるだろう。

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