経済的脅威となりつつある地球温暖化問題

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2007年01月12日

  • 河口 真理子

今年は地球温暖化問題が広く社会の関心を集める年となろう。前回、温暖化問題が社会的に大きな関心を集めたのは10年前の1997年京都議定書の年であった。当時は、京都で温暖化問題に関する国際的な会議(COP3)が開催される、という点からの関心で、温暖化問題の認識は「我々日々の日常生活には直接支障はないものの、将来重要となるだろう地球温暖化問題」という軽いものであった。これに対し今年の認識は、「我々の生活に打撃を与える脅威」という、よりせっぱつまったものになろう。

1990年代は過去1000年で最も暑い10年だったが、2000年以降も暑い年が続いており、温暖化は急速に進みつつある。温暖化に伴って発生する現象とは、世界の気温が均質に上昇することでなく、旱魃、水害、異常高温、異常低温などの極端な異常気象が、より大きな規模で頻発することなのである。例えば、2003年には欧州では記録的な熱波による犠牲者が15000人以上にものぼり、2005年9月米国ニューオリンズではハリケーン・カトリーナが死者1400人以上にのぼる大被害を与えた。また日本でも、2004年夏には統計を取り始めてから最大の10個の台風が上陸し多大な被害を与え、2006年年初から東北地方は例年にない大雪に悩まされ、年末近くなって北海道で竜巻が大きな被害を与えた。現在、豪州は、例年にない大干ばつに悩まされている。

この地球温暖化を食い止めるには、温室効果ガス排出量を即刻5割から8割削減しなくてはならない。しかしながら、残念なことに世界の温室効果ガス排出量は増加している。中国やインドなどの途上国が経済成長にともない大幅に排出量を増やしているだけでなく、先進国の削減も進んでいない。例えば日本の場合、京都議定書の目標値(2008年から2013年の間に1990年比6%削減)に対して、2005年時点の温室効果ガスは8.1%増えており、目標達成には14%以上の削減が必要である。こうした地球の現状に警告を発する人が増えてきた。昨年11月英国は、「温暖化による被害はGDPの5%から20%と予想される」というスターン報告書を発表した。また、温暖化問題に関する講演会を世界各地で1000回以上行った前米副大統領のアル・ゴア氏の映画「不都合な真実」は米国ドキュメンタリー映画歴代3位のヒットを記録した。1月20日からの日本での上映に先立ちアル・ゴア氏が来日し、1月15日には経団連で日本の経営者むけの講演会も予定されている。

地球環境問題は、今や一部の専門家や行政・企業だけが取り組む問題ではなく、一人ひとりが取り組むべき人類共通の課題ということを一人でも多くの人が自覚し、速やかに行動を起こすことが求められている。

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