増加するアジア・ヘッジファンド
2007年04月05日
2003年から強まったヘッジファンドの増加傾向は、依然として続いている。なかでも、アジアを投資対象とするヘッジファンドの増加ペースは、世界全体のヘッジファンドの増加ペースを上回っているとみられる。ユーレカヘッジによれば、2006年末におけるアジア・ヘッジファンド(※運用資産の1/3以上をオセアニア含むアジア地域で運用しているヘッジファンド)の資産残高は1,390億ドル(約16兆円)、ファンド数は1,039に達する見込みという(ファンド・オブ・ヘッジファンズ除く)。幅広い分野で増加がみられており、例えば、インド、中国を対象とするヘッジファンドの増加も顕著である。日本のみを投資対象とするヘッジファンドの資産残高も2006年末には400億ドル(約5兆円)、ファンド数は240まで増加すると見込まれている。アジアの経済成長ペースの速さ、金融市場の規模の大きさ(例えば、世界の株式時価総額に占めるアジア・オセアニア地域のウェイトは3割である)に比して、世界のヘッジファンドに占めるウェイトがせいぜい1~2割と推察されることを考え合わせると、アジア・ヘッジファンドの増加基調は続く可能性が高い。逆にいえば、今後、アジアの金融市場において、ヘッジファンドの影響力が一段と増す公算は大きい。
戦略別にみると、アジア・ヘッジファンド運用資産の過半は、株式ロング/ショートに向けられている。世界的にみても、株式ロング/ショートは最もウェイトの大きい戦略であるが、そのことはアジア・ヘッジファンドにおいてより顕著である、ということになる。日本のみを対象とするヘッジファンドについてみると、その傾向は更に際立っており、8~9割は株式ロング/ショートとみられる。ヘッジファンドを運用対象とする投資家のみならず、多くの市場参加者にとっても、アジア・ヘッジファンドの戦略が多様化するかどうかは焦点の一つとなっているが、これまでのところ、その動きはごく緩やかなようである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日