寒ブリと環境税

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2006年12月28日

  • 牧野 潤一
先日の新聞に正月前の庶民に残念な記事が2つ載っていた。地球温暖化がこのペースで続くと高級トロや寿司ねたの太平洋クロマグロの生息に深刻な影響が出て、ただでさえ厳しいクロマグロの資源状態がさらに悪化するというもの。もう一つは、おせち料理の定番である寒ブリ漁の不振である。これは、佐渡市の水揚げが昨年12月は120tであったのものが今年は5t。これは高水温などの温暖化が主な原因だという。

京都議定書の2008年~12年の第一約束期間の初年度がせまってきている。しかし、日本の温室効果ガス排出量は04年時点で90年対比7.4%増加しており、環境省は6%の削減目標達成のため環境税導入を推進している。環境税の効果は化石燃料の節約を促す価格効果、税収を温暖化対策に活用することが出来る財源効果、アナウンスメント効果の3つが挙げられる。課税対象は全ての化石燃料と電気。税率は炭素1tあたり2400円で税収額は4900億円。税収のうち3400億円が温暖化対策に使われる。差し引きするとGDPへの影響は年率-0.01%程度に留まる。

環境税の導入は、経済的国際的競争力の低下などから産業界からの反対も多い。環境税導入によるCO2排出削減効果が明確ではないのに、「税ありき」の議論がすすめられている点や、現在導入されている「石油石炭税」との二重課税という点などである。

英国政府気候変動・開発における政府特別顧問のスターン氏(元世界銀行上級副総裁)は10月30日、イギリス政府により委託された気候変動と経済に関するレビュー(スターンレビュー)を発表した。温暖化対策を行わない場合にはGDPの20%の損失が生じると警告、一方で早期に厳しい対策をとれば世界の年間GDPの約1%の支払に留まること示した。

早く適切な対策を講じれば、環境・景気への影響は小さくて済む。劣悪な環境を次世代に残さないために、後回しにしない政策対応を望みたい。

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