シンガポール経済動向

~新興国の高成長持続、優れたハブ機能が成長を支える~

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2006年12月19日

  • 髙品 佳正

2006年のシンガポール経済は、原油高、金利上昇といったマイナス要因に加え、地政学的リスクを感じながらも、1)世界経済の拡大による輸出の増加、2)企業の機械設備需要の高まり、建設需要の下げ止まりによる設備投資の増加、3)金融業界をはじめとする雇用環境の改善に加え、継続的な観光客数の伸びによる民間消費の増加、などに支えられ、前年比+7.5%の成長を遂げるとみている。輸出増加においては、中心となる米国のほか、マレーシア、中国といったアジア地域の寄与が増している。航空輸送、製造過程における検査・試験センターとしての優れたハブ(※1)機能から、半導体を中心とする中継貿易拠点としての同国の重要性が高まっている。年後半、生産拠点シフトによるHDD減産、グローバルなIT市場調整の影響でエレクトロニクスを中心とする製造業に減速感が出た局面では、堅調なサービス業、下げ止まりがみられる建設業が成長を下支えしている。総じて堅調なサービス業の中で注目度が高い業種の1つが資産運用業。ここでも同国の法制・税制の整備等による金融ハブ機能の充実が、世界各国から同国への進出を促し、さらには付随したアウトソーシングをはじめとするサービス市場全般の活性化につながっている。こうした経済の好調、不動産市場の回復を受け、水面下が続いていた建設業も年央にはプラスに転じている。

07年のシンガポール経済は+4.5%の成長を予想する。原油価格の高止まり、06年後半からの米国経済の減速、IT市場の調整等によるマイナスの影響は限定的なものとなり、新興国市場の高成長持続、同国の優れたハブ機能の維持・強化が成長を支えるとみている。前年に比べ減速はするものの、引き続き、輸出、民間消費、設備投資等、主要項目においてバランスのとれた成長が期待できる。

11月に発表された、今後6ヵ月間の景況感調査による景況感は製造業、サービス業ともに良好。製造業では、中間所得層の拡大、普及率の上昇が見込まれる新興国市場向けの携帯電話をはじめとするデジタル・コンシューマー製品ならびに部品をけん引役に、中心となるエレクトロニクスの持続成長が予想される。非エレクトロニクスでは、石油掘削装置をはじめとする豊富な受注残を有する輸送機器のほか、製薬工場の能力が増強されるバイオメディカル、域内の基礎原料需要が旺盛な化学なども好調が見込まれる。サービス業では、輸送、観光、資産運用のほか、不動産市場の回復、同国を代表するショッピングエリアであるオーチャード・ロード沿いの大規模商業施設、カジノを有する総合リゾートなどの開発進展から、不動産、建設、銀行などが好調業種として期待される。

(※1)ハブとは中枢・中核拠点の意。シンガポール政府は、ビジネスおよび投資において、グローバルな観点から競争力・魅力を維持、高めるべく、空港、港湾、金融、観光、医療、教育など、さまざまな分野でのハブ機能強化に取り組んでいる。

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