07年のアジア市場見通し
~アジアへの資金流入が継続する中で、株式市場は前半と後半で主役が交代~
2006年12月15日
グローバル投資家は今後、ますます割安なアジア市場への投資を積極化することになるだろう。バリュエーション上の割安度が今後更に注目されそうな背景に は、世界のリスク資産市場(株式や商品)の同時変動性(同調性)がある。00年以降、中国やインドなどの巨大新興市場の勃興が資源需要の増大や貿易や投資 などを通じた世界経済への影響度の高まりにつながり、世界のリスク資産市場の同調性を促進したものと考えられる。そうであるならば、グローバル市場におけ るポートフォリオ運用の分散効果は低減していることになり、投資方針の帰結としてはできるだけ割安な市場を選択し、時間の分散効果に賭けるのがより望まし くなるだろう。
もうひとつの要因として注目できるのは、グローバルマネーの潤沢な流動性が今後も増加すると見られる点である。米国株の堅調/米ドル安の組み合わせは、米 国投資家のリスク許容度の低下を通じてアジア市場への資金流入を更に促すだろう。今後も中国を中心としたアジア域内貿易活動が堅調となり、金利差要因に加 えてアジア各国の貿易黒字の増加を通じてアジア通貨高を促し易い環境が続くだろう。03年以降の米国からの世界の各地域株式市場への投資状況をみると、日 本を除くアジア地域株式の買い越しは順調に拡大を続け、06年(1~9月を年率換算)では250億米ドル近くに達する見通しである。これは他の新興市場へ の投資額を大幅に凌駕しているだけでなく、日本市場への投資額をも大きく上回り、もともと米国投資家の関心が高い欧州市場への投資額に迫る規模である。株 式市場の割安性への関心が高まる中で、ますますアジア市場へ振り向けられる資金規模は増大しそうである。
このようにアジアの株式市場で流動性の拡大が見込まれる中で、世界の景気循環との関係から物色される業種は年前半と後半とでは様相を異にすると思われる。
OECDが公表している景気先行指数(G7ベース)はほぼ1年ごとに上昇、下降を繰り返し、現在は06年第1四半期につけたピークから下降~横バイ中であ る。過去のパターンが当てはまるとすれば、同先行指数は07年第1四半期中にもボトムをつけ、その後緩やかに上昇に向かうと思われる。07年前半はやは り、同先行指数との相関が比較的低い商工業、消費財(ディフェンシブ)、ヘルスケア、公益などのサービス関連セクターや金利が今後緩やかに低下に向かう中 で優位性を発揮すると思われる金融(銀行)や不動産といった金利敏感セクターに重点を置くべきだろう。ハイテクを初めとする輸出関連セクターについては第 2四半期以降に徐々に比重を高める戦略を採用しても相場上昇に乗り遅れることはないだろう。
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