世界における格差問題
2006年11月27日
今年10月には、NYダウが2000年1月につけた過去最高値(終値ベース)を更新したが、ブッシュ共和党には追い風が吹かなかった。2001及び2003年減税措置の経済効果を強調しても、富裕層優遇の批判は消せなかった格好である。また、2005年の世帯の年間実質所得(中央値)は6年ぶりに前年水準を上回ったが、依然としてブッシュ大統領が就任した前(2000年)よりも1000ドル以上少ない水準である。実際、共和党が上院で議席を失った州をみると、オハイオ、ミズーリ、ロードアイランドなど失業率が全国平均を上回る州が半分を占めている。ブッシュ大統領も選挙後の記者会見で、早速最低賃金の引き上げに言及している。感謝祭翌日の11月24日から本格化したホリデー商戦だが、事前調査では、昨年実績をやや下回るという内容が多い。支出予定額の分布をみると(ConferenceBoard調査)、1000ドル以上使うという割合は昨年並みであるが、200ドル未満に抑えるという割合はやや増えており、全体を押し下げる要因になっているとみられる。
格差の問題は日米にとどまらない。EUが11月22日に発表した報告書によれば、単一通貨であるユーロを導入した国々の間で成長率やインフレ率にばらつきが生じているために、困難な問題に直面しているという(理念通りであれば、モノ・ヒトの移動を通じて差が縮小していくはずなのだが)。また、10%近い経済成長を遂げている中国においても、下位10%に相当する貧困層の実質所得は、2001年から2003年の間で逆に2.4%も減少している(FinancialTimes11月22日付による)。足もとの世界経済は5%近い成長が続いており(IMFの予想では2006-07年も約5%)、過去25年間を振り返っても非常にパフォーマンスがいい時期といえる。だが、その裏側に、格差拡大という共通の問題が存在することを注視しておくべきだろう。
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