証券軽減税率の維持を!
2006年11月22日
個人の金融税制は「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、平成15年に株式譲渡益税、配当税などが租税特別措置法で、20%を基本とする預貯金の税や不動産の税に比べ、10%の低率にそろえられた。
しかし、この措置は時限法だった。
導入された軽減税の期限は、平成19年12月(配当税は平成20年3月)までとなっていた。
そこで一部で、今後個人金融税制をどうしようか、という声が起こって来ている。
政府税制調査会などは、時限措置であった優遇税制を全て打ち切り、本則通り株式投資の税金も預貯金の税金と同じだけの負担に戻すという。
しかし、証券界はこの考えに反対している。
金融課税の軽減は未だ十分に効果を挙げたとは言い切れないからである。
株価が7607円88銭の底(日経平均)を記録したのは平成15年4月だが、投資はすぐには増えず、はっきりと増加が認められるようになったのは平成17年の9月頃になってからである。
現在(執筆時点)、平成18年の11月だから、軽減税率の恩典により、株価が上昇した時期は、まだ本当に短い。
また、現時点の日経平均の水準は、平成18年11月20日の終値で15,275円94銭であり、1989年12月29日につけた最高値38,915円87銭の約39%程度に過ぎない。
個人金融資産に占める株式の割合を見ても、軽減税率の効果もあり以前より多少は増えたものの、まだ8.1%に過ぎない。米国の14.3%、英国の11.7%、フランスの13.0%と比べるとまだまだ少ない。投資信託の割合を合せて見ても、わが国の11.7%に対し、米国は28.1%、英国は16.8%、フランスは22.5%と差はかえって拡大する。ドイツも、株式の割合だけなら6.6%とわが国を下回るが、投資信託を合せると、18.7%とわが国を大きく上回る。
今、軽減税制を打ち切ったのでは、「貯蓄から投資へ」という軽減税率の意図そのものが、一時的な思い付きと思われてしまう。
個人投資家の株式投資を増やし、資本市場に厚みをつけるという本来の目的は到底達成できずに終わる事になってしまう。
国がひとたび税法を通じてはっきりと意思を示したならば、その意思が誤っていたことが明らかになったり、あるいは、効果がないことが明らかになったりしない限り、継続的に一定方向の措置を維持し、措置の目的や意図が納税者に誤解されないようにしなければならない。
虻を取ろうとして右側に伸ばした腕を、次の瞬間には左側に伸ばすようでは、納税者としては、どちらの方向に大きな政策目標があるのか分からなくなってしまう。
国としても大きな成果を上げることはできなくなる。政府は税制を通じて、虻蜂取らずにならない明確な措置を、常に国民に示していく責任がある。
もちろん、健全な財政の重要性はこれを否定するものではない。
しかし、ひとたび資本市場に厚みをつけるために株式に軽減税率を導入した以上は、措置がはっきりと効果を挙げ、我が国の個人投資家が欧米並みの株式・投資信託などの投資を実現するまでは、株式軽減税率を適用していくべきなのである。
しかし、この措置は時限法だった。
導入された軽減税の期限は、平成19年12月(配当税は平成20年3月)までとなっていた。
そこで一部で、今後個人金融税制をどうしようか、という声が起こって来ている。
政府税制調査会などは、時限措置であった優遇税制を全て打ち切り、本則通り株式投資の税金も預貯金の税金と同じだけの負担に戻すという。
しかし、証券界はこの考えに反対している。
金融課税の軽減は未だ十分に効果を挙げたとは言い切れないからである。
株価が7607円88銭の底(日経平均)を記録したのは平成15年4月だが、投資はすぐには増えず、はっきりと増加が認められるようになったのは平成17年の9月頃になってからである。
現在(執筆時点)、平成18年の11月だから、軽減税率の恩典により、株価が上昇した時期は、まだ本当に短い。
また、現時点の日経平均の水準は、平成18年11月20日の終値で15,275円94銭であり、1989年12月29日につけた最高値38,915円87銭の約39%程度に過ぎない。
個人金融資産に占める株式の割合を見ても、軽減税率の効果もあり以前より多少は増えたものの、まだ8.1%に過ぎない。米国の14.3%、英国の11.7%、フランスの13.0%と比べるとまだまだ少ない。投資信託の割合を合せて見ても、わが国の11.7%に対し、米国は28.1%、英国は16.8%、フランスは22.5%と差はかえって拡大する。ドイツも、株式の割合だけなら6.6%とわが国を下回るが、投資信託を合せると、18.7%とわが国を大きく上回る。
今、軽減税制を打ち切ったのでは、「貯蓄から投資へ」という軽減税率の意図そのものが、一時的な思い付きと思われてしまう。
個人投資家の株式投資を増やし、資本市場に厚みをつけるという本来の目的は到底達成できずに終わる事になってしまう。
国がひとたび税法を通じてはっきりと意思を示したならば、その意思が誤っていたことが明らかになったり、あるいは、効果がないことが明らかになったりしない限り、継続的に一定方向の措置を維持し、措置の目的や意図が納税者に誤解されないようにしなければならない。
虻を取ろうとして右側に伸ばした腕を、次の瞬間には左側に伸ばすようでは、納税者としては、どちらの方向に大きな政策目標があるのか分からなくなってしまう。
国としても大きな成果を上げることはできなくなる。政府は税制を通じて、虻蜂取らずにならない明確な措置を、常に国民に示していく責任がある。
もちろん、健全な財政の重要性はこれを否定するものではない。
しかし、ひとたび資本市場に厚みをつけるために株式に軽減税率を導入した以上は、措置がはっきりと効果を挙げ、我が国の個人投資家が欧米並みの株式・投資信託などの投資を実現するまでは、株式軽減税率を適用していくべきなのである。
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