テーマパークの示す民主主義への道のり

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2006年11月01日

  • 原田 泰
中国陝西省の省都、西安に行ってきた。陝西省日中知識交流会という会議があって、経済問題についてのお互いの知識を交換して学びあいましょうというものだ。基本的に、エネルギー・資源節約や環境保護についての日本の失敗や成功を率直に説明して、どうぞ参考にして下さいというものだ。

西安は、唐の都の長安だ。長安は、秦の都の咸陽に近く、また、前漢の都でもあるから、始皇帝の兵馬俑や漢の景帝の墳墓、長安の建物など、遺跡の宝庫でもある。

中国はどこでも建設ラッシュで、こんなに作って大丈夫かと心配になる。特に西安で心配になったのは娯楽施設の建設だ。大唐芙蓉園というものがあって、唐の時代の皇帝が楽しんだ庭園を再現したものだ。ハウステンポスのようなテーマパークだ(大唐芙蓉園で検索すればどんなものかウェッブサイトで見ることができる)。中国にしてはかなり高い入場料で、客が入るかと心配になるが、それなりに入ってはいる。他にも、市内には音楽噴水もある。音楽に合わせて噴水が変化するという趣向である。こちらはタダだから、人が沢山集まっている。

インフラの過剰供給になるのではないかと心配したのは日本人の偏見だったかもしれない。なにしろ、陝西省の人口は3700万人で、西安だけでも700万人である。日本のように、人のいないところにテーマパークを作るのとは訳が違う。しかも、唐と漢の都であるから、全国から観光客が集まる

テーマパークでのインフラの過剰供給という問題がないようなのだから、高速道路ならなおさらだ。三国志の舞台の漢中まで、高速道路ができると9時間の旅程が3時間に短縮されるという。

もちろん、テーマパークや噴水を作ることがもっとも賢明な資金の使い方であるかどうかは分からない。しかし、市は人々に娯楽を与えたいと思っているのではないかと思った。豊かになった人々が集まり、楽しめる場所を作ることが、権力者の地位を保証すると考え出しているのではないだろうか。市長は、選挙で選ばれる訳ではないが、選ばれるかのように行動するようになっているのではないか。民主主義に向けた道のりが始まっているのかもしれないと思った。

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