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大きな転換点を迎える米国の証券取引市場

2006年10月24日

新林 浩司

先 日、シカゴにある2大先物取引所の合併が発表されたほか、今年に入りニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダックが欧州の証券取引所に触手を伸ばす など、このところ取引所を巡る再編が世界中で激しくなっている。また、このようなニュース以前にも、ニューヨーク証券取引所とナスダックが国内大手ECN (電子取引ネットワーク)をそれぞれ買収するなどの大型合併報道が目を引いた。しかし、米国ではこれらの動向以外にも、金融機関が複数の取引市場に共同出 資する動きが熾烈を極めており、日本から見れば異常とも思える事態となっている。(下表参照)

表の出資報道はNYSEとナスダックがECN買収を発表した昨年4月以降のものが殆どであり、今年度に入ってからも増加している。その背景には、レギュ レーションNMS(全米市場システム)と呼ばれる規制の採択が大きく影響している。市場機能を持つECNが幾つも出現した結果、株式が適正な価格で取引さ れたかどうかが分りにくくなったため、散在している取引市場を機構的に連結することで取引の透明性を確保しようとするのがNMS規制の目的である。この規 制が昨年4月に採択された直後、NYSEとナスダックがそれぞれECN買収を発表したが、続くように金融機関が地方取引所や新興市場に共同出資を始めた。 出資の動きが今も活発なのは、規制の本格導入が来年に控えているためである。

それではなぜ、規制導入が金融機関を出資に走らせたのだろうか。これには証券取引の電子化が大きく関わっている。インターネットの普及を背景にして、投資 家が気軽に取引できるオンライントレードが1996年頃から始まった。前後して、電子取引ネットワーク(ECN)の登場が売買注文の執行スピードを飛躍的 に早め、市場間の競争をもたらした。そうして電子化が進んだ約10年の間に、技術面で先行するECNに対して、NYSEとナスダックは変化への追随に遅 れ、執行スピード、コスト、テクノロジーといった競争で大きく水をあけられてしまったのである。NMS規制が採択された際、NYSEとナスダックが大手 ECNを飲み込む判断を下したのは市場としての地位を保全するためであり、本格的な電子取引時代の到来を確信したからである。しかし今度は、NYSEとナ スダックによる2大寡占が進めば自分たちにとって不利とみた金融機関が、小規模ながらも優れたシステムを有する電子取引市場に積極投資することで、 NYSEとナスダックを牽制する動きに出たというのが大方の見方となっている。

NMS規制の本格導入後、米国の証券取引市場がどう変化するのか。現在のところ誰も明確な答えを持ちえていない。しかしながら、これまで個別に電子化を進 めてきた米証券市場が総体として大きく変貌する可能性を秘めている。しかもその変化は、金融派生商品(デリバティブ)に見られる取引の多様化や、欧州やア ジアを巻き込むグローバル化とも相乗し、未曾有の激震ともなりかねない。この構造変化が日本の証券市場に今後どのように波及していくのか、見極めるべき時 期はすぐそこまで迫っている。

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