中国での事業パートナー選定
2006年10月20日
2000年以降、中国投資は急激に拡大し、既に多くの企業が中国にビジネスの拠点を設立している。また、高成長を遂げる中国は生産拠点としての位置付けか
ら、拡大する中国消費市場を見据えた現地販売型の拠点に急速に変貌している。このような背景もあり、最近では新規の中国進出よりもむしろ、生産製品の多様
化/高度化、販売機能の追加等、既存の中国拠点やビジネスを如何に拡大していくかが重要な課題として認識されている。 このような状況の下、より積極的な中国事業展開を図る上で、中国企業との戦略的な提携が注目されている。特に、販路拡大に向けた販売ネットワークの構築や 中国企業の技術力向上を背景とした調達の多様化等を目的とした提携が多くなってきている。 その際、自社に適した信頼できるパートナーと組めるかが事業の成否を大きく左右する要因となるが、中国企業は玉石混合であり、その選定は容易ではない。私 も業務上、このような相談を多く受けるが、その際、以下の点をポイントとして指摘している。 (1)事業パートナーを選定する前に自社の中国ビジネス戦略を十分検討し、自社の戦略を踏まえて、事業パートナーに期待する役割(自社との役割分担)、提 携することにより期待する効果、選定の基準または条件等を明確化しておくこと。 (2)事業パートナーを選定する際、候補対象を最初から既存の取引企業や提携のアプローチを受けている企業などだけに限定するのではなく、先ずは対象業界 全体の現状を把握した上で、客観的に候補企業を絞り込んでいくこと。 (3)候補対象企業の調査に際しては、公表された情報だけでなく、必ず現地調査を実施し、財務状況、設備や技術レベル、経営戦略、経営者の資質等、様々な 視点から評価を試みること。 具体的には、先ず、想定している中国戦略やビジネスモデル等と中国における対象業界の現状を分析し、企業調査のポイントを明確にした上で、比較可能な企業 情報をロングリスト(企業の比較分析資料)としてまとめ、有力な企業を絞り込む(第1次絞込み)。 次に、詳細企業調査として、絞り込んだ企業の現地調査(企業訪問)を実施し、経営計画、経営者の資質、経営運営状況、設備の状況等、選定に必要な詳細情報 を収集する。 最後に詳細企業調査の結果と事業戦略を踏まえ、改めて望ましい事業モデルを検討し、最適なパートナー候補企業を選定している。 このような方法はある程度時間とコストがかかるが、中国での事業パートナーの選定は極めて重要なプロセスであり、慎重かつ綿密に行う必要がある。
|
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日