3兆円企業になっても3割成長続くホンハイ

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2006年10月04日

  • 杉下 亮太
台 湾を代表するハイテク企業としてよく知られているのは半導体ファウンドリーのTSMCだろう。TSMCと並んで、あるいはTSMCに替わって台湾ハイテク セクターの顔ともいうべき存在になりつつあるのが、EMSのホンハイである。

TSMCはファウンドリーというビジネスモデルを成功させ、生産技術面では世界有数の半導体メーカーとなった。しかし、TSMCは今や高成長企業というよ りは、安定成長期に入った感がある。ITバブル後の落ち込みを経て2004年以降、同社は過去最高益を更新し続けているものの、競争の激化などによって増 益率は鈍化し始めている。

これに対して、ホンハイは2005年の連結売上高がNT$911bn(約3兆円)に達し、台湾ハイテクセクターで最大を誇る規模となっているにもかかわら ず、今後も3割増収・3割増益が期待できる状況となっている。純利益は08年にはTSMCの約3/4の水準まで達するものと予想される(図表1)。
図表 1 TSMCとホンハイの純利益比較
図表 1 TSMCとホンハイの純利益比較
出所:会社資料、予想はDIR


ホンハイはEMS業界においても図抜けた成長性を見せている。1999年の時点で同社の売上高はEMSセクターで6位だったのが、2004年にフレクトロ ニクスを抜いて首位に立ち、その後も2位以下との差を広げている(図表2)。

ホンハイの強さは、(1)圧倒的なスピード、(2)垂直統合を背景とするコスト競争力、にある。圧倒的なスピードは、巨大かつ高度な金型成型設備によって 生み出されている。他社を凌駕する短納期が評価されて、シェア拡大が続いている。垂直統合は他のEMSメーカーではあまり見られない点である。 M&Aも活用することでホンハイは部材の多くを内製化できる体制を構築している。たとえば、携帯電話では完成品組み立てだけでなく、PCBやコネ クター、液晶画面、マグネシウム合金・アルミ合金の筐体、キーパッド、フレキシブルPCB、カメラモジュールなどをグループ内で供給することが可能であ る。このような垂直統合が同社のコスト競争力を一段と強化する結果となっている。
図表 2 EMS大手6社の連結売上高推移
図表 2 EMS大手6社の連結売上高推移
出所:会社資料

ホンハイの売上高の約半分はPC関連と見られている。PCのうちデスクトップPC関連ではすでに高いシェアを獲得した。今後同社がシェア拡大を狙っている と見られるのはノートPCや周辺機器である。PCに次ぐ部門と推測されるのが携帯電話である。2006-2007年の最大のけん引役は携帯電話関連と同社 はコメントしている。垂直統合路線が奏功し、大手ブランドからの受注が増えている様子である。

そして、中期的に新たな成長の柱として期待されるのが家電である。従来同社はゲーム機生産でシェアを伸ばしてきたが、プレミアイメージング社の買収により デジタルカメラにも参入することになった。加えて、2007年にはいよいよ液晶テレビの生産を本格化させる方針である。

規模が拡大するにつれて、日本企業にとってもホンハイは一段と注目される存在となってきている。日本企業のシェアが高い家電分野に本格的に乗り込んでくる ということは、日本企業からの受注増を狙っているということでもある。その一方で、垂直統合路線は部品メーカーとの競合を意味する。EMSメーカーは本 来、部品メーカーにとって納入先だが、部材内製化を勧めるホンハイは、部品によっては競合相手となり得る。一部の部品では実際に日本企業からシェアを奪っ ていると見られる。7月に日経エレクトロニクス誌でホンハイ特集が組まれ、見出しが「敵か見方か」となっていた。まさにその通りである。
 

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