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景気回復のジレンマ

2006年10月02日

原田 泰

日本経済はこれまでのところ回復を続けている。2002年1月の底からすでに4年以上がたち、11月には過去最長のいざなぎ景気の57か月を超すことになる。にもかかわらず、多くの人々は、景気が良くなっているという実感を持っていないようだ。

データを見るとそれも当然だ。時間当たりの実質賃金は、上がっていない。しかし、なぜ現在、景気が回復しているかといえば、実質賃金が上がっていないからだ。実質賃金が上がっていないので、企業にとって、人を雇えば利益が上がる状況が生まれている。雇用が増えているので、賃金×雇用で表される総賃金収入は増えている。普通の人々の主要な所得は、労働所得だ。労働所得が増えているので財布の中身が増えている。失業率も低下しているので財布の紐も緩んでいる。その結果、消費がなんとか増えている。しかし、時間当たりの賃金は増えていないので、消費の伸びも急速というわけではない。回復期間が長くなっても、景気がすごく良くなったという実感はあまりない。

1965年11月から70年7月まで続いたいざなぎ景気は、消費主導型で、実質賃金も、雇用も伸びていた。生産性の上昇率が高く、それが賃金上昇として働く人にも還元されていたからだ。

今回の景気回復の主因は雇用が伸びていることにある。雇用を毎月勤労統計調査の雇用指数と労働時間指数を掛け合わせたものを労働投入指数として、これで見ると、91年から2003年までは年率マイナス0.8%で減少してきたが、2003年から2006年(最新時点までの平均)では年率約0.7%で上昇している。労働投入の回復が景気回復に遅れて始まっているのは、雇用が景気の遅行指標だからだ。労働投入が伸びている理由は賃金が安定していることによる。だから、賃金を上げれば雇用が伸びなくなる可能性がある。これは景気のジレンマだ。しかし、足取りの遅い景気回復でも、回復しないよりはいいのではないか。

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