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同時多発テロ発生から強化されてきたBCP(事業継続計画)について

2006年09月28日

古井 芳美

911の同時多発テロが発生してから5年が経過した。この間、米国の金融機関では、大手を中心にBCP(事業継続計画)を改めて見直し、事業継続向け施設の強化が進められた。現在では、SIA(米国証券業協会)、BMA(米国債券市場協会)、FIF(米国先物業協会)などが主導で、証券会社に加え各取引所・取引システム、さらには決済機構やサービスプロバイダを巻き込み、バックアップサイトを使った証券業界一斉テストが実施されるまでに至っている。

911のテロ以前も事業継続サイトの構築が行われてきたものの、主サイトと同じビル内に設置されている、人員が移動する際の交通手段が使えなくなる事を想定していない等の問題があった。これらの同時多発テロの際に明らかになった問題を踏まえ、各監督・規制機関がBCPについての取り決めを行い、事業継続向け施設を構築する際の基準を設けた。この基準に従う為、3年間の間に2つの事業継続サイトを構築した金融機関すら存在する。このような異例の短期間で構築できた理由は、基準に従うことが必要だったからだけでなく、事業の復旧に時間が掛かる企業は「予期しない事象に対応できない企業」とされ、株価の低迷につながりかねないことを懸念した点が挙げられる。実際に事業を継続できたかどうかだけではなく、常に十分な備えをしているかどうかが企業価値を大きく決めるようになってきており、BCPを推進することはまさに企業の死活問題になっているのである。

このような対策を進めた結果、米国の金融機関はテロに限らず、鳥インフルエンザの流行をはじめとする様々な事象に対応できるようになってきている。例えば、昨年12月に起きたニューヨークの地下鉄のストライキも「予想外の事象」だったが、金融機関でも政府でも特に問題なく対処した結果、事業の滞りはなかった。現在、日本でも多くの金融機関が、BCPの構築とそれに必要なインフラの準備をすすめている。その際には、単純に同時多発テロのような事態だけではなく、発生しうる様々な問題についてどのように対策をするのかも含めて考える必要があるのではなかろうか。

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