公益法人の指導監督基準等の改正

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2006年09月06日

  • 経済調査部 市川 拓也
所管する官庁が公益法人を指導し、監督するための基準として、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」というものがある(平成8年閣議決定、平成9年一部改正)。この指導監督基準と運用指針の一部改正が、先月、閣議決定された。従来、指導監督基準で公益法人の理事のうち「所管する官庁の出身者」の割合は理事現在数の3分の1以下とした上で、運用指針において「所管する官庁の出身者」の定義として、本省庁課長相当職以上、且つ、退職後10年未満という要件が示されていたが、改正によってこれらの要件が実質的に取り払われることになる。

平成18年度公益法人に関する年次報告(以下、公益法人白書)では、所管官庁出身者の公益法人理事への就任状況に係る実態調査の結果の概要(平成18年5月に実施)が掲載されており、ここから計算すると、本省庁課長相当職以上、且つ、退職後10年以上の要件を同時に満たさない者は、勤続年数20年以上だけで合計4,385人(専門的業務従事者等を除く)となる。同公益法人白書では、理事のうち「所管する官庁の出身者」の理事現在数の3分の1を超えている法人数は国所管9法人、都道府県360法人(平成17年10月1日現在)としているが、新定義に従えば、これらを上回ることが推測される。

今回の改正は、行革国会ともいわれた第164回通常国会における審議等を踏まえたものである。たしかに、参議院行政改革に関する特別委員会の会議録をみても、「所管する官庁の出身者」の定義による辻褄合わせが指摘されており(平成18年4月26日の同会議録参照)、行革という視点からの政治マターとして捉えれば、早急な対応が求められる問題であったのかも知れない。

ただし、通常国会で可決・成立した行政改革関連5法案のうち3法は公益法人制度改革に関する法案であり、これらが可決・成立したことで公益法人の主務官庁制は廃止されることが決まった点は考慮する必要があろう。冒頭のとおり、指導監督基準等が所管官庁による公益法人の指導・監督のためのものであることを鑑みれば、法案成立後の所管官庁関連箇所の改正というのは違和感を覚えざるを得ないためである。早急な対応という点では評価に値すると考えられるが、一方で行政色の濃い一部の公益法人にとっては、原則2年以内のできるだけ早い時期の適合というのは、どうも納得しがたいというのが本音ではなかろうか。

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