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金融サービス業の時代へ

2006年08月23日

森 祐司

「貯蓄」から「投資」へという潮流が日本の金融制度やビジネス、投資家や預金者を巻き込みながら進展してきている。そしてその潮流は、従来からあった枠組み、すなわち、「間接金融」から「直接金融」などという枠組みを時代遅れのものとし、様々な金融機能を提供する企業を金融サービス業として定義せざるをえなくなってきている。

ボディとマートンは、今ではすっかり有名になった論文の中で、金融システムを制度的な構造や金融機関の形態で捉えるのではなく、機能的分類による枠組みを提示している。金融システムの究極的な機能は、不確実性下での経済的資源配分の距離及び時間を越えた配分・利用を促進することだとした上で、その下位に6つの核となる機能を識別する。すなわち、(1)取引を円滑にする決済の方法の提供、(2)資源をプール化したり小口化したりする仕組みの提供、(3)異なる時間、地点、そして産業のあいだで経済資源を移転する方法の提供、(4)リスクを管理する方法の提供、(5)経済の様々な分野における分散的な意思決定の調整を助ける価格などの情報の提供、(6)情報の非対称性に基づくインセンティブ上の問題に対処する方法の提供である。このような機能面から近年の日本の金融システムの変貌を眺めると、日本版ビッグバン以降のダイナミズムは、銀行業・証券業・保険業のみならず、他業態の企業までもが、そのような機能を自らの商品・サービス提供の中に加えていくプロセスだったと解釈できる。決済専門銀行しかり、銀行代理店制度しかり、証券代理店制度しかり。事実、銀行による投資信託の販売状況を見ると、従来にはなかった異質な金融機能を自らの商品・サービスの拡充を図り実績を作ったのだと言えるだろう(ただし、その内容に歪んだ構造を見るために若干の不安感を覚えるが)。今後はそのような機能の提供体制の同質化がさらに進み、業種が違うということでは金融ビジネスを考えられず、金融サービス業として大きく捉えて再構成するしかないということになってきているのである。

一方、金融サービスの消費者、あるいは投資家は従来のままなのであろうか。投信販売を担当するある地銀関係者によると、ここ数年での個人顧客の金融リテラシーの進展度には目を瞠るものがあるという。郵便局による投信販売の本格化、銀行による保険商品販売の展開などを見ると、今後は驚くべきスピードで個人顧客の資産構成の多様化が進展するかもしれない。従来の業態という固定観念を本気で捨てて金融サービス業としてどのような戦略とり顧客に提示できるのか明確にしなければ、顧客にそっぽを向かれることになるのかもしれない。

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