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転職するなら40歳までに?

2006年08月21日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 政策調査部長 鈴木 準

人口が減り、労働力が減ると見込まれている。減って希少になるものは、うまく使う必要がある。今よりも、労働生産性の水準や上昇率の高い産業や仕事で労働力が活かされるようになれば、就業者が減っても経済全体の生産性や所得は向上する。かつて「雇用対策」として、公共投資関連に大規模な労働力を人為的に誘導したことにはマイナス面もあった。

8月10日に公表された05年の雇用動向調査によると、転職入職者(調査期間中に採用された人のうち、その前1年の間に就業経験がある人)の賃金変動割合は、前職の賃金に比べて「増加」が31.5%、「変わらない」が37.4%、「減少」が30.2%であった。もちろん転職には様々な事情があるから、賃金だけで転職の状況を評価するのは難しい。

ただ、生産性のより高い仕事の賃金がより高いと素直に仮定すれば、転職によって賃金が増加する人の割合が上昇する方が望ましい。人々は、より高い報酬を得るために、自らの技術や能力を向上させる努力をし、場合によっては転職を決意する。年金のポータビリティ(持ち運び)が確保され、労働市場が整備されて転職の障害が減ってきたメリットは大きい。

だが、05年の賃金変動割合を年齢別にみると、転職で増加した割合は年齢が低いほど高く、40歳以上になると減少した割合が増加した割合を上回る。これには若年層では中小企業から大企業へ、高齢層ではその逆が多いという要因もあるが、どのような転職であっても高齢層では賃金が減少する割合が高いとみられる(99年版中小企業白書参照)。

転職により賃金が1割以上増加した転職者の割合から、1割以上減少した転職者の割合を引いた指数を「転職による賃金変動DI」とよぶ。このDIは、80年代に景気動向にそって変動した後、90年代以降はほとんどの年齢層で悪化傾向を辿ったが、転職を余儀なくされたような中高年層で雇用情勢の厳しさが特に現れていることが考えられる。

しかし、DIは04年から05年にかけて全般に改善し、それは20歳代後半層(▲0.3から+6.0へ改善)や50歳代前半層(▲18.3から▲8.1へ改善)で目立つ。いずれも、景気の長期低迷の影響を大きく受けてきたと考えられる年齢層である。

もう一つ構造的な視点からの解釈は、「年の功」や勤続年数を柱にした賃金決定システムの修正が進んでおり、現在は賃金カーブを再形成する過程にあるということである。労働市場で生産性に応じた価格付けがされるようになっていくことは、労働力をうまく使う(何歳であっても賃金が上昇するような転職や働き方を増やす)ために必要なことであるだろう。

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鈴木 準

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