M&A時代に求められる戦略思考の拡張
2006年08月10日
近時、日本企業による大型のM&A(Merger andAcquisition合併、買収)の動きが注目される。東芝のウェスチングハウス買収、日本板硝子のピルキントン買収、日産自動車・ルノーとゼネラル・モーターズの提携交渉、さらに王子製紙の北越製紙への買収申し入れに始まる一連の動向である。日本を代表する企業が、買収を重要な戦略の柱にしている。こうした動きは日本企業の技術力の高さ、ナレッジの大きな蓄積、市場の成熟等を背景にしている。
ところで、こうしたM&Aの過程は様々な戦略案の資本市場における選別過程といえる。選別にあたっては、中長期的に企業価値を最大化することができるかにより判断される。M&Aは企業という法的支配の単位で、経営資源の組み替えを行なうものであり、資本市場はこれにより限られた経営資源の最有効活用をダイナミックに推進するのである。
図 戦略思考の拡張
こうしたM&A時代において、企業はどのような戦略思考をとるべきかを述べてみたい。ポイントは図のように思考の範囲を拡張することである。これにより企業価値を最大化する観点から、M&Aの多様な機会の認識が可能とされ、また買収側、売却側のいずれにおいても合理的な意思決定が可能とされる。
まず、自社がコントロールできない「外部環境」として業界をとらえる戦略策定から、M&Aを中心に「(2)業界」を変えていくことにより自社グループの戦略策定をしていく思考の拡張である。とりわけ成熟業界では、業界再編なしには自社の企業価値向上の機会はおろか現状の利益の維持も難しいことが多い。
内需型業界中心に市場として実質的に国内しか見ていない企業が多いが、グローバルに見れば、一般的に国内は成熟市場、国外に多くの成長市場が存在するのが常態である。したがって
「(3)市場」を国外にまで広げて戦略を策定する思考の拡張が必要となる。多くの場合、業界と競合相手の再認識につながると同時に、自社のM&Aの機会と同時に脅威の認識につながる。
さらに、原材料から製造、販売、サービスまでの最終顧客に最大の価値を提供する「(4)バリューチェーン」の次元での思考の拡張が必要である。バリューチェーンは技術と並ぶイノベーションの宝庫である。異業種を含む多様な企業との連携が必要であり、M&Aの機会も多い。
最後に、以上のような思考の拡張をして成長する複数の事業を中長期的にどのような「(5)事業構成」によって保有すべきかという思考の拡張が必要である。
ところで、こうしたM&Aの過程は様々な戦略案の資本市場における選別過程といえる。選別にあたっては、中長期的に企業価値を最大化することができるかにより判断される。M&Aは企業という法的支配の単位で、経営資源の組み替えを行なうものであり、資本市場はこれにより限られた経営資源の最有効活用をダイナミックに推進するのである。
図 戦略思考の拡張

こうしたM&A時代において、企業はどのような戦略思考をとるべきかを述べてみたい。ポイントは図のように思考の範囲を拡張することである。これにより企業価値を最大化する観点から、M&Aの多様な機会の認識が可能とされ、また買収側、売却側のいずれにおいても合理的な意思決定が可能とされる。
まず、自社がコントロールできない「外部環境」として業界をとらえる戦略策定から、M&Aを中心に「(2)業界」を変えていくことにより自社グループの戦略策定をしていく思考の拡張である。とりわけ成熟業界では、業界再編なしには自社の企業価値向上の機会はおろか現状の利益の維持も難しいことが多い。
内需型業界中心に市場として実質的に国内しか見ていない企業が多いが、グローバルに見れば、一般的に国内は成熟市場、国外に多くの成長市場が存在するのが常態である。したがって
「(3)市場」を国外にまで広げて戦略を策定する思考の拡張が必要となる。多くの場合、業界と競合相手の再認識につながると同時に、自社のM&Aの機会と同時に脅威の認識につながる。
さらに、原材料から製造、販売、サービスまでの最終顧客に最大の価値を提供する「(4)バリューチェーン」の次元での思考の拡張が必要である。バリューチェーンは技術と並ぶイノベーションの宝庫である。異業種を含む多様な企業との連携が必要であり、M&Aの機会も多い。
最後に、以上のような思考の拡張をして成長する複数の事業を中長期的にどのような「(5)事業構成」によって保有すべきかという思考の拡張が必要である。
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