英語教育と国語教育

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2006年08月08日

  • 山中 真樹
去る3月27日、中央教育審議会の外国語専門部会が、小学校高学年での英語教育必修化を提言する報告書をまとめた。グローバル化時代における英語のニーズや語学教育における幼年時教育の重要性、そして何より日本人の英語力の現状に鑑みると小学校での英語教育必修化は必然的な方向性なのであろう。

ただ、小学校における英語教育の必修化に対しては、「英語教育より国語教育を重視すべきだ」との根強い批判がある。確かに自国語で自己なり他者なりを表現できない者が、外国語でそれらを表現できるわけがないのであって、その意味では国語教育優先論には一定の説得力があるといえる。

しかし英語か国語かは必ずしも二者択一ではなく、必修化肯定論、否定論双方を踏まえ、「小学校において英語教育を必修化する以上、国語教育をなお一層拡充すべきである」といった線が妥当なところではないかと思われる。そして国語教育を拡充するに際しては、古典教育、とりわけ漢文教育を重視することを提案したい。最近では、中学・高校においてさえ漢文教育が縮小される方向にあるように見うけられるが、いかがなものかと思う次第である。むしろ小学校段階から積極的に漢文教育を実施することが望ましい。

漢文は外国語を自国語として読み下すという世界にもおそらくあまり例がないと思われる外国語の導入方式である。いま仮に、人々の生の諸様式のうち、普遍的なものを文明と呼び、個別的なものを文化と呼ぶとすれば、漢字(中華)文明に対峙した先人達がそれに同化・吸収されることなく、逆にそれを日本の文化として取り込んでいった努力の結晶ともいうべきものである。その意味では、日本人が英語を学ぶに際しても、日本語⇒漢文⇒英語の順に学んでいった方が英語修得に関しても理解がより深まるといえよう。

そして何よりも漢文を学ぶことは人生を豊かにする。人格形成の最初期に漢文を学ぶ必要性は高い。内容が理解できない段階での素読でもよいから漢文教育を是非とも拡充すべきであると考える。

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